聖路加病院は「米国より日本への賜物」ビラ2021/11/07 07:37

 『また会う日まで』、5月の末、秋吉利雄へ日野原先生から手紙が来た。 アメリカ軍が空から撒いた一枚の伝単すなわちビラが同封されていた。 表には「米国より日本への賜物(たまもの)」という見出しと、聖路加病院の写真がある。 裏の本文は、こうだ。

 「此の戦争は我々が始めたのではない。君等の知つて居る通り、この戦争は日本の軍部が予告もなく、又陛下の御裁可も仰がずに真珠湾を攻撃して始めたのである。

我々はこの戦争を始めなかつたが、その終局は引き受ける。必要とあれば君等の軍需産業及び軍事施設を全滅し得るのだ。必要とあれば我々は君等の国がすつかり廃墟と化するまで爆撃する事が出来る。 併し、我々は破壊を好まぬ。平和を好み、死を自己にも他人にも欲せぬ故に、我々は曾(かつ)て日本に病院を建て、それが今日も君等の間に役立つてゐるのである。

我々は自国の為に戦ふ人々に敬意を表する。君等は勇敢に戦つて来た。併し、我々は無駄な犠牲を嫌ふ。君等は勇敢に戦つたにも拘らず、今非常な不利な状態に陥つてゐる。はや、勝負は明(あきら)かである。これ以上戦闘を続ければ無駄な苦しみを増すばかりである。早く戦争を止(や)めて戦争以前の友達に成つて来給へ。君等の面目を傷つける様な事はしない。我々に対して恐れを抱く必要は決して無い。我々が子供や病人、また苦しんでゐる人々等に対して温かい感情を持つてゐる事はアメリカ人を知つてゐる者に聞けばよく分る。

君等は我々を恐れるより寧ろ陛下を裏切り、何百万の兵士を殺し、都市を死と荒廃に帰せしめ、剰(あまつ)さへ、君等を衣食の不足に陥れた軍部を恐るべきである。」

日野原先生は手紙に、このビラを読んだ人々がここは安全だと思ってたくさん集まってきます、その一方で、やはりあそこはスパイの巣だと言って特高や憲兵が来ます、と書いている。

 米空軍謀略ビラの福沢諭吉<等々力短信 第1140号 2021(令和3).2.25.>を、参照のこと。 ネットでは、「米軍宣伝ビラの画像」(bing.com/images)のコレクションや、早稲田大学20世紀メディア研究所の「戦時宣伝ビラ・データベース」などで、多くの実物を見ることができる。

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