本井英俳句日記2020『二十三世』<等々力短信 第1149号 2021(令和3).11.25.>2021/11/18 18:13

 2020年1月の短信は「お正月の「俳句日記」」、俳句誌『夏潮』主宰の本井英先生が2年前に告知された「咽頭癌」、その後の合併症からも快復され、ふらんす堂のホームページで「俳句日記」の連載を開始されたのを紹介した。 その病もすっかり治癒され、「俳句日記」一年分がこの度『二十三世』という文庫本よりやや大きな、手に馴染む、素敵な装幀の単行本になった。 書名「二十三世」は、2019(令和元)年8月、先生が大磯町からの委嘱で、元禄の大淀三千風から数えて二十三代目の「大磯鴫立庵」の庵主に就任されたことに因む。 12月30日<庵主としてなすべきことも年の内>

 11月14日<酒断てば桜鍋にも足向かず>。 7月16日「病気の主たる原因であった「酒」を止めて二年半。甘いものが好きになったのは仕方ないとして、見境なく手が出るのは少々格好が悪い。」 スーパーのレジ脇の和菓子にひょいと手を出し、奥様が眉を顰める、昔は絶対にしなかった。 7月13日<良くできし妻夏痩もせざるなり>

 5月11日<川蜻蛉見てゐるおのが息の音> 季題を長時間観察するのは、写生の極意だといつも教わる。 9月15日「塩辛蜻蛉」は全部オス、「麦藁蜻蛉」は全部メス。 5月14日、ともかく生物界では「メス」の方が偉い、黒鯛、生まれた時は全部オス、「ちんちん」と呼ぶ、それが育って「カイズ」、4年くらい生き延びるとやっと「黒鯛」と呼ばれるまでになり、みんなメスになる。 子孫を残す大役はメスになった黒鯛にしか任されていないのだ。 『二十三世』、知らなかったことが多く、勉強になる。

 5月21日<ディンギーや起きる練習くりかへし>、湘南ボーイの先生、釣りも包丁を持つのもお手の物だ。 よく切れる包丁というのは洵に気持ちの良いもので、鎌倉の研ぎ屋さんから包丁が戻るときにはちょっとわくわくする、とある。

 4月17日<競漕や橋潜るとき迅かりし>、久々にテニスコートへ、ご老人がにわかに破顔一笑されて「エイちゃん!」とのたもう。 かれこれ6、70年前に鎌倉山でご近所だった方だ。 つづけて「イタズラ坊主だったよ、ねえ」と。 4月9日<新校舎のガラスが光る風が光る>、昭和33年鎌倉から三田の中等部に通うことになった。 真っ黒に日焼けしていたので、担任のK先生が「クロイワルイコ」と呼んだ。 黒岩涙香のもじりとは、知るよしもなかったが、このK先生の三年間(それ以降も)によって、本井先生の人格のおよその部分が形作られた、かけがえのない恩師である、という。

 季題の句をどう詠めばよいのか、毎日楽しく読ませて頂いていたのだけれど、いざ自分で俳句を詠むとなると、なかなか思うようにいかない。 8月21日ご推薦の「鼻うがい」の器具を取り寄せ、今も続けているのが、唯一の成果かもしれない。

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