漱石の初恋の人?と井上眼科病院 ― 2021/11/20 07:01
7月、朝日新聞夕刊連載の「マダニャイとことこ散歩旅」の「本郷通り」に、井上眼科病院が登場した。 7月19日は「若き漱石 待合室の初恋?」。 お茶の水周辺には、夏目漱石ゆかりの場所がいくつもある。 その一つが、ニコライ堂の前にある井上眼科病院(千代田区神田駿河台4丁目)。 学生時代、目の感染症を患って、毎日のように通院していた時期があった。 妻鏡子の「漱石の思い出」に、「そこの待合で落ちあう美しい若い女の方がありました。背のすらっとした細面の美しい女で、そういうふうの女が好きだといつも口癖に申しておりました」とあり、この女性は、初恋の人だったのではないかと言われている。
この女性について、親友の正岡子規に宛てた漱石の明治24(1891)年の書簡にも、「昨日眼医者へいった所が、いつか君に話した可愛らしい女の子を見たね。(略)突然の邂逅(かいこう)だからひやっと驚いて、思わず顔に紅葉を散らしたね」とある。
7月20日は「文豪のカルテ 調べてみたが」。 今年創立140年を迎えた井上眼科病院の第11代院長の井上賢治さん(53)に話を聴きに行った。 この病院で漱石が初恋の人と出会ったとされる話を、井上賢治さんが知ったのは、昭和58(1983)年に病院が百年史をまとめたのが、きっかけだった。 百年史の中でも「夏目漱石と井上眼科病院」という項目があり、女性に会いたいがため、症状は軽いのに、漱石がひんぱんに長期にわたって通院したとされる逸話を紹介している。 カルテが残っていれば、症状や通院歴も確認できる。 病院は明治時代のカルテの一部を今も貴重な資料として保存しているが、多くは関東大震災で焼失した。 編纂の際、漱石のカルテが残っているか調べてみたが、残念ながら見つからなかったそうだ。
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