「慶應義塾志木高新聞」百年祭記念号2021/12/08 06:59

 真珠湾攻撃80年の日である。 昭和16(1941)年生れの私も80歳、紘二の「紘」は「八紘一宇」の「紘」なのだ。 慶應義塾が創立150年を迎えた2008(平成20)年、『三田評論』11月号、特集 学塾の歩みを記録する、巻頭随筆「丘の上」に、「「慶應義塾志木高新聞」百年祭記念号」を書かせていただいた。 どなたが推薦して下さったのかわからないが、編集部から依頼があった。 肩書などないから困って、「個人通信「等々力短信」発行人」としてもらった。

       「慶應義塾志木高新聞」百年祭記念号

                   馬場紘二(個人通信「等々力短信」発行人・塾員)

 慶應義塾が創立百年を迎えた一九五八(昭和三十三)年、私は志木高校の二年生だった。あっという間に五十年の歳月が流れた。その五十年の物差しを、さらに二つ伸ばしただけで、安政五年・一八五八年の福沢先生の塾創立に至ることに、改めて驚く。

 慶應義塾志木高校は、その前年に農業高校から普通高校へ転換、一期生の私たちは新しい学校を第一歩からつくりあげることになる。クラブ活動もあいついで新設された。一年生ながら先輩たちと協力して、学校新聞の発行、生徒会の創設、日吉高や女子高との提携活動などに、走り回った。百年祭の年には、生徒会が発足、塾創立百年・志木高創立十周年記念の収穫祭も、実行委員会を組織して初めて生徒の手で開催した。この記念すべき年の秋、たまたま私は新聞部の編集長と生徒会の委員長だった。

十一月八日に新設の日吉記念館で開かれた塾創立百年記念式典に参列し、十二日の「塾生の日」記念式典には全校生で参加をした。「慶應義塾志木高新聞」は十一月十四日、第六号「百年祭記念号」を発行した。一面を担当し、お言葉を述べられる昭和天皇の写真をトップに、「義塾百年のクライマックス」〝慶應の新しい出発点〟「天皇陛下迎えて記念式典」の大見出しを立てたことは、忘れられない。記事には奥井復太郎塾長が式辞で「過去の百年を思うより、これからの百年がどうなるかが問題である。われわれは次の百年に出発しなければならない」と述べ、陛下もお言葉で「今後さらに協力一致して、この輝かしい伝統を守りわが国文運の進展に寄与するよう」望まれた、と書いた。「塾生の日」記念式典で塾長が述べた「今日は考える日だ。慶應の明日を背負うのは君たちなのだから」という式辞も記事にしている。百年記念式典から六日、「塾生の日」から二日、この短期間で新聞を発行するには、陛下の写真を実況中継のテレビの画面から撮ったり、それなりの苦心もした。当時使っていた新橋の時事印刷所に通い詰め、一般紙を真似た速報を喜んだ高校生らしい気分も、なつかしい思い出だ。

一面は、あと三枚の写真で構成されている。右下は十一月七日、上大崎の常光寺で行なわれた福沢先生の墓前祭での奥井塾長、左下の二枚は自動車パレードと福沢諭吉展会場である。キャプションに、自動車パレードは十一月八日十二時半より志木高からも一台参加し日吉から神宮まで三時間百台の大パレード、福沢諭吉展は十一月四日から十六日まで日本橋三越で開かれており隣の明治天皇展と共に人気をよんでいる、とある。

 当時、日吉高と女子高は、すでに日吉祭を共同で開催するなど、うらやましい提携を進めていた。新聞部は、両校との提携の先端を切って、一九五八年三月には三校合同の新人養成講習会に参加し、初歩から新聞製作を学び、後には『ザ・ジャーミネーター(発芽力測定装置)』という研究新聞を共同で発行したりした。この頃の三校の新聞部仲間は今でも、毎年六月に「ジャーミネーターの会」を開いて、旧交を温め講演を聴く楽しい集いを続けている。

 友人知人に個人通信「等々力短信」を送りつづけて三十三年、この十月で九九二号になる。近年は「轟亭の小人閑居日記」というブログを毎日書いている。そのルーツを尋ねれば、間違いなく高校新聞に行き当たる。書くことと、それが活字になって、読んでもらえることの喜びは、高校新聞で覚えた。

最近は、志木高同窓会「志木会」の俳句の会「枇杷の会」をご指導いただいている縁で、本井英元教諭主宰の俳誌『夏潮』に入会し、俳句を詠んでいる。しかし、少しも上達しない。少年の日に叩き込まれた5W1Hの新聞文章と、説明になってはいけない俳句との、相克に悩む今日この頃である。

コメント

_ 深瀬 啓司 ― 2021/12/09 16:11

慶應義塾創設100年でも大活躍されておられたのですね。
当時の志木校新聞の発行の苦労が目に浮かぶようです。
そして伝統が延々と受け継がれているのが頼もしいです。
義塾の智徳の源泉でしょうか。

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