森山多吉郎登場のドラマ『わげもん―長崎通訳異聞』2022/02/22 07:13

 NHKが土曜ドラマとして1月8日から全4回で放送した『わげもん―長崎通訳異聞』(宮村優子・オリジナル脚本)を見た。 福沢諭吉が安政6(1859)年、横浜を見物しオランダ語の役立たないことを知り、英学転向、英語を学びたくて訪ねて行ったが、忙しくて教えてもらえなかった森山多吉郎・栄之助(文政3年6月1日~明治4年5月4日 1820.7.10.~1871.5.4.)を、小池徹平が演じるという予告編を見たからだ。 森山多吉郎は、最初にfreedomを「自由」と訳した人だと、穂積陳重『法曹夜話』五十八にあるそうだ。

  『わげもん―長崎通訳異聞』の舞台は、嘉永2(1849)年、ペリー来航の4年前の長崎。 20歳の福沢諭吉が蘭学に志して長崎へ出た安政元(1854)年より、5年前の設定である。 「わげもん」は和解者、通詞、通訳者のことだ。 当日記の2月14日、森鴎外が牧野富太郎に「舌人とは通詞、通訳人のことだ」と教えた「舌人」と同じだ。 当時の長崎は、オランダと清に門戸を開いた国際都市で、外国船が現れることも多かった。 徳川幕府のオランダとの交易や世界情勢の情報収集に、オランダ通詞の役割は大きかった。 アメリカやロシア、イギリスとの交渉が生じた際の、窓口でもあった。

 物語は、朝ドラ『おかえりモネ』で「りょーちん」を演じた永瀬廉(King&Princeのメンバーだそうだ)が主役の伊嶋壮多で、通詞で失踪した父の行方を捜しに長崎にやって来る。 父の残した対訳辞書を持ち、蘭学塾のそばで育って、門前の小僧習わぬオランダ語をしゃべる。 長崎奉行配下の通詞たちは、アメリカやイギリス船の来航で、英語の習得に努めていた。 森山栄之助は、捕鯨船から密入国を企てて囚われているアメリカ人ラナルド・マクドナルドに英語を習い、仲間に塾で英語を教えている。 伊嶋壮多は、人だかりの殺人事件現場を覗いていて、怪しまれ、芸者置屋に逃げ込む。 そこには、神頭有右生・こうずゆうせい(高嶋政宏)という謎の医者、芸妓見習いで父が唐人のトリ(久保田紗友)がいる。 トリの友人、未章・みしょうMichaelかMitchel(トラウデン都仁)と、置屋に出入りする女医えま(浦浜アリサ)も、オランダ人を父に持つハーフだというところが、国際都市長崎らしい。

 伊嶋壮多は、森山と知り合い、トリや未章に助けられて、通詞たちに父親のことを尋ねて回るのだが、なぜか皆、その件になると口を閉ざして話さなくなる。 何か重大な秘密が隠されているようだ。