上野浅草フィルのシベリウスを聴く2022/07/12 06:56

 7月10日、「四万六千日お暑い盛りでございます」と桂文楽が演っていた、ほおずき市の日に、浅草にいた。 高校の同級生、赤松晋さんがチェロを弾いている、上野浅草フィルハーモニー管弦楽団の第72回の定期演奏会が、浅草公会堂であったからだ。 今回は、フィンランドの国民的作曲家ジャン・シベリウスの作品が特集された演奏会だった。 赤松さんのおかげで、会場に来ていた何人かの、皆80歳を超えた志木高の同期生たちの元気な顔を見、会話も交わすことができたのだった。

 指揮は御法川雄矢さん。 まず、フィンランド人に「第二の国歌」として愛されているという交響詩「フィンランディア」、森と湖の広大な大自然を思わせる、壮大な音が響き渡る。 つづいて、交響詩「エン・サガ」、「エン・サガ」はスウェーデン語で「ある伝説」という意味だそうだ、寒く暗い北国の叙事詩、物語を思い浮かべながら聴く。

 休憩後は、交響曲第5番 変ホ長調 作品82、1915年第一次世界大戦下、ロシア支配からの独立をめざした時の作品だそうだ。 フィンランドは、長くスウェーデン、ロシア二大勢力の相克場で、13世紀末にスウェーデンに統合され、以後6世紀間にわたりスウェーデンの支配を受けた。 1809年、ナポレオン戦争の結果ロシアに割譲され、大公国となった。 その頃からフィンランド人としての民族的自覚が強まり、19世紀末から始まったロシア帝国の圧迫に対して抵抗を行い、1917年12月6日、独立を宣言した。

 アンコールは、カレリア組曲だったそうで、フィンランドの13世紀からの歴史劇音楽という。

 上野浅草フィルが定期演奏会でシベリウスの作品を特集したのは、当然、ロシアのウクライナ侵攻を受けての情勢に、フィンランドを支援する意図があったのであろう。 私たち聴衆も、同じ気持であった。 フィンランドのNATO早期加盟によって、ロシアがウクライナ侵攻と同じことをフィンランドに仕掛け、第三次世界大戦の引き金にならないことを、ひたすら祈りながら演奏を聴いたのであった。