春風亭一之輔の「お見立て」前半2022/12/28 07:07

 落語研究会、ご来場の会は久々で、お客様がいらっしゃるのは、笑わなくてもいいもんで…。 働くのは大変で。 私は物を知らないもんで、ユウキュウ取って来た、と言われた。 すみません、休みを取って、来て下さって。 有休、有給休暇だ、仕事を休んでも、給料は出る。 泥棒だなって、思いました、根性、曲がってます。 噺家も、有休があるといい。 客は、有休じゃあ、しょうがない、25分の持ち時間を待ち、納得して帰る。 のどかな世界だ。 噺家衆の延長線上に、吉原の花魁のお勤めがある。 客を選べないから、苦界という。 登楼っても、花魁が来ない、振られたということがある。 客は振られちゃった、と納得して帰る。 次に行って、何で来ないんだと文句を言うと、この助平野郎なんて言われる。 そもそも吉原へ行くのが、助平なんじゃないのか、知り合いの花魁に聞いてもらいたい。

 喜助どん。 喜瀬川さん、杢兵衛大尽が、いらっしゃいました。 嫌いなの、太って真っ黒け、くっついたら離さない、小さい時に嫌いだったゲジゲジよりも嫌い、行かないよ。 (両手を広げ、指も広げて)花魁、喜んでお待ちかねですって、言いました。 断っておくれよ、入院したということにして。 風邪っぴきで、肺炎になるとお医者さんに言われていると。 そんなこと言えません、真面目ひと筋、学校じゃ級長務めた。 杢兵衛大尽、毛虫みたいに、嫌われている。

 ワーーーッ、ケスケだんべえ、コケッコ、コケッコ、コケーチョッたら、コケーチョ! 絶好調ですな、喜瀬川さん、来られません。 ほかで務め果たしてから来れば、大丈夫だ。 今、入院してまして、入院中。 ヌーイン中と、手紙を書いてくれればいい、早く言え。 村さ、帰ぇる。 (嬉しそうな大声で)お大尽、お帰りーーッ! 何で、溌溂と言う、見舞ぇに行くか。 まだ夜明け前で、お見舞いは駄目です。 病院では、病いがうつるって。 ワシと喜瀬川は、末はヒーフになる間柄、すとっからいだ。 すとっからい? そこは言わなくてもいいくらいだ。 喜瀬川の兄貴ということにしろ。 タヌキ? お兄さんの寸法で。 兄ちゃんだったら、来ねえ、何で妹を買いに来る。

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