柳亭市馬の「穴どろ」後半2022/12/31 07:37

 せっかくだから、頂くとするか。 キューッ、冷たいけど、旨い。 刺身も、残してる。 アーーッ、生き返るね。 こっちの徳利は…、空だ。 これは入ってるよ、まとめて残しておいてくれればいのに。 旨いよ、有難てえね。 知らねえ家だからな、何と言うか。 三両ないと、家に入れない。 そりゃあお気の毒だ、三両上げましょうって、言うかどうか、わからない。 これだけの屋台骨を背負ってるんだ。

 かかあ、一緒になった時は、ああじゃなかった。 貧乏所帯で、あんな怖い顔になった。 昨夜(ゆんべ)より今朝被ぶりたき綿帽子。 俺のことを、「お前さん」なんてね。 仲間が来ると「あなた」なんて言ったもんだが、今は「おい」。 「おい」って奴があるか。

 何だ、猫か。 赤ん坊じゃないか、這ってきやがった。 ウマウマ。 ジイジ。 おトト。 鯛を取ってやろう、骨が危ないから…、アーンして。 ハッハッハッ、可愛いな、まあ、一杯飲め。 おっとっと、こぼしたな。 立っち、できるか、手を取ってやろう。 手を離すな。 あんよは上手、転ぶはお下手。 下がったところで、ウワァーーッ! 後ろに、ひっくり返った。

 大店では、蔵の前に、穴倉が掘ってあった。 火事の時に、家財道具や品物を放り込む。 蓋がずれていた。 もんどりうって、穴の中へ。 水が滲み出している。 冷べたいね。 お湯屋かい、番頭さん、熱くしてくれ。

 何か蔵の方が、やかましいな。 坊が、いない。 婆や、坊を寝かしつけてくれたんじゃなかったのか。 いたいた。 ジイジが、トンした。 誰だい、誰かが穴に落ちた。 カネか、藤太郎か。 泥棒かい、今日は目出度い日だ、交番は駄目だ、頭(かしら)を呼んで来い。

 頭は出かけてて、留守番の横浜の平さんという人が来てくれました。 はい、足と足を持って、引っ裂いちゃいましょう。 穴倉に落ちたんで、間抜けな野郎だ。 煮え湯をかけて、沢庵石を放り込む。 駄目だ、降りて、引きずり出してもらいたい。 実は、上から下に降りるのが、不得手で。 早く、やってくれ、お礼に一両出す。 そうすか。 降りて来い、ふくらはぎを喰いとるぞ。 仲間の余興、ウナギの水呑みができなくなる。 二両、出そう。 股ぐらの急所に、ぶら下がる。 硬いものでもあてがって、飛び込まないと。 三両、やるから。 三両くれるなら、俺の方で上がっていく。

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