柳家さん喬の「夢の酒」後半2023/04/04 06:55

  若旦那は、そのご新造を世の中にこんなきれいな人がいるのかと思ったっていうんです。 えっ、話してごらん。 お花、泣くとか、しゃべるとか、どっちかにしなさい。 おばあちゃんのお酌じゃおいやでしょうけれど、毒が入ってるんじゃないから、一杯だけでも飲んで下さいとすすめたんだそうで。 すすめ上手だな。 やったりとったりして、二十五本も飲んだんだそうです、ウワッ、ウワッ! 息を吐きなさい。 若旦那は、頭が痛くなって蒲団に横になった。 飲みつけないものを飲むからだ。 その蒲団の中に、ご新造が入って来た。 そんな不行跡なことをしたのか、お花が怒るのは当たり前だ。 何、笑ってる。 お花が泣いて、親父が怒っているのに、お前は何が可笑しい。 今のは、みんな夢の話ですから。 お花、そうなのか。 はい、そうなんです。 倅、どうしてそういう手数のかかる夢を見るんだ。     美人局か何かだったら、悪い人にからまれることになって、世間でお店の評判も落ちることになります。 お父っつあん、そのご新造に会って、若旦那にちょっかいを出さないように言って下さい。 夢の話だろ。 淡島様に願をかけて、上の句を詠みあげて寝れば、夢の人に会わせてくれると言います。 お父っつあん、今すぐ、昼寝をして下さい。 お店で、若旦那が夢の続きを見るかと思うと、私はウワッ、ウワッ、ウーーッ! わかった、わかった、願をかけよう。 どうか淡島大明神様、上の句を差し上げますので、倅の夢のところへ。 「われ頼む 人の頼みの なごめずば」(下の句は「世に淡島の 神といはれじ」) グーーッ! グーーッ!

 ご新造さーーん、大黒屋の大旦那様がいらっしゃいましたよ。 先ほどは、倅がお邪魔して、ご厄介になりましたそうで。 倅にお花という嫁がおりまして。 お清、お父っつあんに上がっていただいて。 何してんの、お清、お酒の仕度を。 お好きなんだそうだから、冷やでいいから。 冷やは駄目、若い時に失敗しまして、燗で。 つなぎで、冷やをいかが。 冷やはいけない、待ちますから。 何してんの、お清。 冷やは駄目。

 お父っつあん、お父っつあん! 私は、冷やは駄目。 何だ、お花か。 ご新造に会いましたか? 惜しいことをしたよ。 お叱言の最中でしたか。 いや、冷やでも飲めばよかったなあ。

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