八光亭春輔の「松田加賀」2023/04/27 07:04

 八光亭春輔(はるすけ)も初めて聴く、白髪で、がらがら声、明るい緑の羽織。 この噺、やり手がない、面白くない。 ぬる燗のような、ほんわかした噺。

 江戸っ子の料簡。 駆け出して来て、つんのめった。 また、転んだ、さっき転んだ時、起きなきゃあよかった。 べらぼうめ。 飯粒を練った糊、そくい(続飯)を練るへら、へらぼうでは空気が漏れるから、べらぼう。 大べらぼう、なんて言う。 江戸っ子は、梅雨時を嫌がる。 寝っぱなしって訳にもいかないので、さらしの下帯、耳に湯銭をはさんで、銭湯へ。 ドボンと入って、烏の行水、絞った手拭を二つ叩いた。 ポンと、一つだと、首を斬った時の音と同じ。 縁起で、二つ叩く。 ふんどし一貫で、歩いていると、前から八丁堀の役人がやって来た。 将軍様のお膝元、嫌いなのはお役人だが、間が狭まった。 手拭を肩に掛けると、お役人が見逃した。 手拭を着てる、と見逃す。

 盲人の世界、按摩、座頭、勾当(こうとう)、検校と位が上がる。 検校は、三位の中将の方とも話が出来る、修業に加え千両の金がかかる。 杖の形で、身分がわかる。 座頭は、杖の頭がお団子で、市の名を名乗る。 検校は、撞木(しゅもく)の杖。 盲人同士がぶつかると、相手の杖をさぐる。

 本郷の雑踏で、片方は検校、片方はヒラが、ぶつかった。 杖をさぐって、相手が検校とわかり、ボーーッと上気して、申し訳の言葉も出ない。 こら、無礼な、一言も詫びを言わん、師匠の名を言え、と打ち打擲する。 これから本所一ツ目の惣録屋敷に連れて行き、お前の師匠に掛け合う、と。 関八州とその周辺の座頭を支配した、検校の最古参の役所が、本所一ツ目、江戸は洒落てる。

 小僧の按摩が泣いてるじゃないか、年寄の按摩、許してやれ。 何、わしはただの按摩ではない、検校だ。 それなら、家に帰ってボウフラでも食え。 何だ? 金魚。 金魚じゃない、けんぎょお、だ。

 そこを通りかかったのが、行者。 門口を回って、清めて歩く修験者、名を松田加賀。 仲人は時の氏神と申します、そこが検校殿、お手前様、あなたに突き当たった小僧、年がいかないから度を失って、詫びの言葉が出てこない、この場のことは私に任せて、納めさせていただきたい。 仲人をなさるあなたの、お所、お名前ぐらい伺いたい。 本郷に住す、松田加賀という者で。 検校、前田と間違えた。 加賀様でございますか、と杖をおっぽり出して、お辞儀した。

 相手がそう思っているならと、加賀様になっちゃった。 いかにも、加賀である。 検校、身分のある者が、往来で、喧嘩口論は浅ましい、下々の者を労わってやれよ。 ハハー、前田侯のお通り先とも存じませず、平に、お許し、お忘れを。 加賀は、さっさと先に行くと、「高天原に神留まりまします」と、門付けのお祓いをやり始めた。 そうとは知らない検校、通りを埋めて取り囲んだ野次馬に、どうぞ、今日のことをお忘れを、お側のご重役衆、お取り成しを、と。 野次馬一同、声を揃えて、ワーーッと笑った。 さすがは百万石のお大名様、大したお供揃い!

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