柳亭市馬の「三十石」後半2023/05/02 07:00

 船はいっぱい、すし詰め。 あと、御一人様、御女中での、詰めて下され。 無理だよ。 兄弟、俺が引き受けるよ、その御女中、25、6の小股の切れ上がった…。 膝の上に乗せて、股を割って、抱き寄せる形で…、ほっぺたを引っ付けて、テケレッツのパ。 御女中の荷物を先に。 はいよ、と受け取って、有難い御女中の荷物だと、みんなの頭の上で振って、天井から吊るす。 御女中、こちらへ。 はいはい、この年寄にえろう親切にしてくれまして…。 お婆さんかい。 お婆さんかて、御女中だ。 25、6の三人分だ。 荷物をちょっと下ろしておくんなせえ。 家主の旦那さんが、ほうろくに砂入れて、シッシをするように、と。 オマルかいな。 おいおい、それ頭の上で振ったぞ。 お婆さん、まだしてないんだろ。 さっき、一遍しました。

 (大声で)出すぞーーーッ、出すぞーーーッ。 もやいを解く。 三十石船、年輩の方は広沢虎造先生の「石松三十石船道中」「石松、寿司食いねえ」でご存知ですが、全長五丈六尺(16、7メートル)、胴の間八尺三寸(2メートル60)、米三十石、人間なら三十人を乗せたという。 二丁艪に四っ人(たり)の船頭。(と、舟歌になる。)

 ♪やれぇ、伏見中書島(ちゅうじょじま)なぁ、泥島なぁれどぉよーい、なぜに撞木町ゃなぁー藪の中ぁーよーい、やれさ、よいよいよーい。(下座から、やれさ、よいよいよーい、の掛け声。ボーーンと鐘の音)

 よーい、よーい、豆どん、向う(上方)でおチビと言う女の子が、橋の欄干から船頭に大坂の買い物を頼む。 夕菊さんが、木村屋の簪(かんざし)二つ、枕七つ、鬢付け油買って、早よ戻ってやと、あんたの来るの待ってるでぇ。 勘六よ、ワレのような男でも、好くおなごがあるんか、立って食う寿司も寿司寿司って、昔から言うからな。 そりゃ、蓼食う虫も、虫、虫じゃろが。

 ♪淀の車はくるくるとよ、やれさ、よいよいよーい。(その後、下座でも、歌う。ボーーン)

 ギイーッ、ギイーッ。 茶、くれってか、これは船頭のための茶だ。

 ♪やれぇ、お月さんでもなぁー、ばくちをなさるよーい。 雲の間からなぁ、てらぁ、てぇーらとぉよーい、やれさよいよいよーい。

 御女中、歩いたら危ない。 バリ(小便)はじきなさるのか。 船縁にバリかけると、船霊(ふなだま)様の罰が当たりますぞ。 夜の事じゃ、誰も見ておらんから、グーーンとケツ川に突き出してやりなされ。 色の白いケツや。 ドブーーン。(大太鼓) 何をしとんのじゃ、こいつ、色が白い言うて、川へはまっとる奴があるか、早う上がれ、早う上がれ。

 ♪やれぇ、奈良の大仏さんをよぉー、こ抱きに抱ぁーいてなぁー、お乳飲ませた乳母(おんば)さんは、どんな大きな乳母さんかぁ、一度対面がしてみぃーたいよぉー、やれさ、よいよいよーい。