五街道雲助の「商売根問」 ― 2023/05/14 07:18
ご隠居は、なぜか横丁に住んでいる。 こんちわ。 八っつあんかい、今どこにいるんだ。 寝巻で、蒲団の中。 それは、私。 お前の住所だ。 何です? 住んでる所だ。 ジュッカイの身の上で。 友達の二階に、やっかいになってる。 何をやってる? 日本酒をやってたが、次の日がつらいんで、焼酎にしている。 手についてたもの、手職だよ。 道具は道具屋に売り飛ばした。 おまんまのタネは? こないだまで、楊枝削りをしていた。 利の薄い商売だな、いくらになる。 百本で、三円。 日に何本削れる? 不器用なんで、売れるのは日に十本。 食えるかい? 百本に十日、月に三百本で、九円(食えん)。
そこで、いいのを考えた。 鳥、鳥、雀を一度に五十羽、百羽捕まえる方法を考えた。 鳥刺し、モチを使うのか、霞網か。 焼酎に浸した米、南京豆、紙にくるんだ雷おこし、箒とチリトリを用意する。 江戸っ子の雀のいるところへ、焼酎に浸した米を撒く。 雀たちが寄って来て、チュンチュン、ウマイウマイと、米を食って酔っ払う。 中に芸者の雀がいて、都々逸の回しっこなんかやっているうちに、みんな眠くなる。 そこへ南京豆を撒く。 みんな、いいマクラがあると、南京豆を枕にして眠る。 ぐっすり寝込んだところを、箒とチリトリで集める。 紙にくるんだ雷おこしというのは、何だ? 芸者の雀の箱枕だ。 それ、ほんとにやったのか? やりましたよ、雀たちが酔っ払うところまでは上手くいったんだが、南京豆を撒いたら、その音にびっくりして、雀はみんな逃げてしまった。 えらい損をした。
米と焼酎と南京豆の代金を取り戻そうと、三日三晩考えて、一羽でも金になるウグイスを捕まえることにした。 ウグイスを手づかみにする法を考えた。 絵の具と、バケツに墨汁、ふのり、ご飯粒、梯子を、用意した。 腕に墨と絵の具を塗り、梅の古木に見えるようにして、ご飯粒をのせて、ウグイスを手づかみにする作戦だ。 朝7時に、腕に墨と絵の具を塗り、梯子に乗って、手を出した。 昼になってもウグイスはやって来ない、ウグイスの公休日なのか。 待てば海路の日和あり、ついにホーホケキョの、野太い声がした。 すると、飛び移ってきたウグイスが手首に止まった。 くすぐったくて、しようがない。 手のひらでつかもうとするが、カチカチに固まっていて、手がすぼまらない。 足の方が、おろそかになって、梯子段から落ちた。 梯子段が5本、アバラ骨が3本折れた。
つぎに、動物園にいない動物なら、高く売れるだろう、と考えた。 河童。 いればの話だろう。 餌は何かを考え、お尻を川に突き出して、出たら、手づかみにすることにした。 友達に、尻を貸してくれと頼んだが、みんな駄目だという。 仕方がないので、自分でしゃがんだのが朝の7時から、河童の公休日だったのか、薄暗くなっても出て来ない。 懐中電灯2本で、尻を照らす。 橋の上で、大勢の人が見物していて、お腹下したんですか、なんて聞く。 河童を捕まえるんだと言うと、ダァーーッと笑いやがった。 その声でよろけて、川の中にドブーーン! これがすなわち、河童の川流れというやつでした。
五街道雲助が短く軽い噺を演ったのは、弟子の隅田川馬石(2007年、五街道佐助改メ四代目隅田川馬石で真打昇進)が大ネタの「お初徳兵衛」をかけたのを、応援する気持があったのではないかと感じた。
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