世界の人が行きたい盛岡<等々力短信 第1167号 2023(令和5).5.25.>2023/05/18 06:53

   世界の人が行きたい盛岡<等々力短信 第1167号 2023(令和5).5.25.>

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)が発表した「2023年に行くべき52カ所」で、ロンドンに次いで、盛岡市が2番目に紹介されたという。 NYTは選考理由に、美しい川や山に囲まれた街で、徒歩で楽しめるコンパクトさ、伝統的な建物があることなどを挙げたそうだ。 盛岡市の中心部には北上川、中津川、雫石川が流れ、秋はサケが遡上し、冬は白鳥も飛来する。 街中のどこからでも、どかんと岩手山が見える。

 末盛千枝子さんの『出会いの痕跡』(現代企画室)が、市原湖畔美術館「末盛千枝子と舟越家の人々」展の記念出版として刊行された。 中心になっているのは、2018年から4年間、岩手銀行の月刊誌『岩手経済研究』に連載された≪松尾だより≫というエッセイだ。 その随所に、盛岡が登場する。 末盛さんは、父舟越保武さんが戦争末期に疎開した故郷の盛岡で、1945年から1951年まで、4歳から10歳、岩手大学付属小学校5年生の夏までを過ごし、わずか6年だが「人生にとってかけがえのない時間でした」という。 父は大理石を彫り、粘土を使ってブロンズ彫刻を作り、盛岡城址近く、今の教育会館のあたりにあった米進駐軍のキャンプに似顔絵を描きに行っていた。

 長女の千枝子さんに二人の妹が続き、初めて盛岡で生まれた男の子が、急性肺炎のため8か月で亡くなる。 両親は、父の姉一家が属していた四ツ家のカトリック教会で葬式をしてもらい、北山の教会墓地に葬った。 仁王新町の家から、日影門外小路の小流れにかかった一枚板の石橋を渡り、一家でその教会に通うようになる。 忘れられないのは、教会の鐘の音で、最近知ったのだが、今も残るその鐘は1900年にフランスから贈られたもので、その音は石川啄木や宮沢賢治の作品にも登場するらしい。

 父の作品《原の城》《ダミアン神父》やヘンリー・アーノルドの肖像などは、岩手県立美術館に収蔵されている。 宮沢賢治の『注文の多い料理店』を最初に出版した材木町の光原社は、世界中の手仕事を集めているが、庭の喫茶店には父のデッサンが飾ってある。 中ノ橋のテレビ岩手の一階にあった(2020年11月まで)第一画廊と喫茶店舷(父の命名)の上田浩司さんは、父や弟直木さんの仕事を認めて応援してくれた。

 ブリューゲルの《雪中の狩人》の絵のような景色、岩手山を正面にみる八幡平の松尾に、千枝子さんの親友が住んでいた縁で、父保武さんが1991年に松本竣介のご子息莞さんの設計で別荘を建てた。 その家に千枝子さんは2010年5月に移住し、翌年3月11日東日本大震災に遭う。 4月から盛岡のNHK文化センターで月一回「絵本の楽しみ」講座を始めた。 被災地の子供たちに絵本を届けようと「3・11絵本プロジェクトいわて」を立ち上げると、1か月ほどで全国から23万冊の絵本が集まった。

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