高校時代「ゲラ」校正の思い出2023/06/05 07:18

活字を拾って組版する活版印刷がほとんど無くなった今、その作業や木製の箱を目にする機会は少ないだろう。 だが、高校生の時、新橋は木挽町汐留の時事印刷所で、『慶應義塾志木高新聞』を印刷してもらっていた私は、私たちの仲間は、それを鮮明に記憶している。 原稿を入稿し、凸版や写真も手配しておくと、ゲラ刷りが出る。 印刷所の二階の天井の低い部屋で、インクの臭いと輪転機の騒音の中、スポーツ新聞や業界新聞の校正をしているおじさん達と一緒に、校正をする。 赤インクの壜がドタンと置いてあり、プロには筆を使っている人もいたような気がする。 一回目の校正をして、またゲラ刷りを出してもらい、再校する。

 ある時、私が書いた原稿を入稿しておいたのに、ゲラ刷りが出ておらず、紙面に空きができそうになった。 原稿もない、ゾーーッとした。 仕方なく、私は思い出し、思い出し、もう一度書いた。 高校生時代ならではの記憶力だった。

各自タブロイド版の一面を担当していた。 予定していた割付で、紙面が埋まることを確認して、組版の現場へ降りて、職人さんと一対一で、活字が木製の箱に入ったのを、一面に組み込んでもらう。 仕事だから付き合ってくれるが、さぞや生意気な高校生奴と思っていたことだろう。 仲間には、事前に一升下げて行く知恵を持っていたりする、大人びた男もいた。

 夜晩くまでかかることも多く、料亭街に近い満留賀といったか、お蕎麦屋さんの「かつライス」の美味しかったことともに、よい思い出である。