ウクライナは「明後日の日本」、島田雅彦さん ― 2023/06/24 07:11
「ツキディデスの罠」で思い出したのは、ウクライナへの全面侵攻が始まって1年経った頃、この侵攻から日本が考えるべきことや、戦争と文学について、朝日新聞が小説家で法政大学教授の島田雅彦さんにしたインタビューだった。(3月8日朝刊) 見出しは「有事の前例「明後日の日本」」。 その主な部分を引用する。
ウクライナ戦争はロシアによる主権国家の侵略だが、米国とその同盟国からの武器供与や軍事費支援を受けたウクライナが代理戦争を継続させられている。 世界戦争を抑止しようとすれば、米国は経済制裁や当事国の反撃を支援するという戦略を取るしかない。 これが戦争長期化の要因にもなっている。
ウクライナ戦争は日本にとっては、「台湾有事」を考える際の前例となり得る。 ウクライナは、「明後日の日本」である。 日本は憲法を順守する限り、単独では戦争に巻き込まれる心配はなかったが、米国との同盟関係がくびきになり、戦争にいや応なく引きずり込まれる。
米国は軍事大国の暴走に対し、間接的にしか関与しないことがウクライナ戦争で明確になった。 代わりに対ロ戦略でも対中戦略でも同盟国への依存を強め、同盟国に軍事力の増強を求める。 日本は安保3文書を改定し、防衛予算の倍増によりこれまで以上に対米従属を強めている。 抑止力という幻想に血税を捧げているようなものだ。
NATO諸国に、中国が台湾侵攻したらどうするか調査した結果、「何もしない」「経済制裁」「外交努力」という答えが合わせて8割を占め、台湾への派兵に否定的な意見が圧倒的多数だった。 そもそも米国も日本も外交的に「一つの中国」を認めているのだから、中国との戦争に大義がない。
それでも日本が中国と軍事力で対抗するなら、日本だけが敗戦を甘受することになる。 「米国は日本を守ってくれなかった」という怨嗟(えんさ)が広がり、ようやく日米安保から脱却できるだろうが、もはや手遅れだ。
ロシア人の一部のインテリは民主化に対する挫折感を抱いているが、元々、帝国であり、革命後も独裁国家だったロシアが本当に民主化したことはない。 そこは日本も似ている。 自分の力で戦って市民が民主化を獲得したわけではないからだ。 (聞き手・丹内敦子記者)
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