春風亭一花の「雛鍔」 ― 2023/06/29 06:58
23日は、第660回の落語研究会だった。 今回から一つ置きの席でなくなって、満席とまではいかないが、八分の入りといったところか、だんだんらしくなってきた。
「雛鍔」 春風亭 一花
「犬の目」 三遊亭 兼好
「五人廻し」 柳家 小里ん
仲入
「江ノ島の風」 柳家 蝠丸
「お化け長屋」 桃月庵 白酒
春風亭一花(いちはな)、初めて聴く、女流は久しぶりだ。 二ッ目で落語研究会に出るというので、浮足立って劇場まで来たら、道端に四千円落ちていた。 ちょうど警察官が立っていたので、渡そうとすると、預かれないので交番に届けるようにという。 こちらも出番があるので、ゴチャゴチャもめていると、たまたま落語評論家の長井好弘さんが通って、後で届けることにして、一緒に劇場入りした。 届けて、落し主が出なければ、私のものになる、(当日の入場料は四千円)お客様の中に四千円を落とした方がいらっしゃったら、後で楽屋口までおいで下さい。
今日ほど、人間やってんの、いやんなっちゃったことはない(と、羽織を脱ぐ、薄い空色の着物、肩がつっぱらかっている)、植木屋が帰ってきた。 どうしたんだい、お前さん、早いね、何かあったのかい。 お屋敷で、松の枝下ろしをしてたんだ、若様が五、六人の供侍とお通りになった。 その若様が泉水べりで、穴明き銭を拾って、田中三太夫様に、爺、これは何だ、と聞いた。 三太夫様が若様は何だと思召しますか、と聞くと、四角い穴があって、表に字、裏に波の絵、お雛様の刀の鍔ではないか、と。 お屋敷育ちは、銭を知らないんだ。 三太夫様に、お幾つですかと聞いたら、お八歳にあらせられる、と。来年はお九歳、ウチの馬鹿ガキと同じだ。 金坊、小遣いをやらなかったら、糠味噌に小便した。
金坊は、どこ行った? 後ろで、話を聞いてるよ。 金坊、腰の荒縄を外せ、洟かめ。 お前、幾つになった? お八歳だよ。 若様の話を聞いてたな。 ちゃんちゃらおかしい、字で書くと、ち・や・ん・ち・や・ら・お・か・し・い。 お前、若様みたいなことが言えるか? 言えるよ、試しにお足を落としておくれ。 おかみさんが、金坊に銭を渡し、お前の方が利口なのはわかっている、と。 何で、お足を渡すんだ。 あいつは、客が来ると、小遣いをくれといい、駄目だというと、あたいが我慢すれば、この貧しい家も何とか持つんだなんて言って、客から小遣いをもらうんだ。
熊さん、いるかい。 うるせえな。 アッ、お店の旦那でしたか、すみません、声が屑屋と似てた。 布団を出せ、綿が出てる。 お前さんに、お詫びです、聞いてくれるね。 酔っ払って来て、こんな家は俺の方から出入り止めだって言ったそうだな。 お前さんはお屋敷で忙しい、番頭の話を聞いて、松の植え替えは彼岸前までというんで、ほかの職人を頼んだ。 祝いで酔っ払って通ったら、お前はもう来なくていいと言われたんで、どなっちまいました。 親父の代からのお得意様、お詫びに行こうと思うんだが、敷居が鴨居で。 火事でもあれば、お見舞いに行けるんだが、明日あたり火でも付けようかなんて。 早く来て、よかったよ。 わざわざ旦那にお出で頂いて、すみません、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、お茶でも一杯。 菓子、持って来い、水屋の羊羹。 古いよ。 薄く切るな、五分だ、二切れ出せ。 お盆にそのまま乗せる奴があるか、紙だ、便所紙は駄目だ、半紙を折るの、四角じゃない、三角に、ボケーーッ。
金坊。 こんなもの拾った、こんなもの拾った! これって、何だろうね。 四角い穴があって、表に字、裏に波の絵、お雛様の刀の鍔じゃないかね。 熊さんのお子さんかい。 ウチの馬鹿ガキで。 お足を知らないのかい、いい子に育てたね。 ありがとうございます、屋敷に出入りしていて、見様見真似で教えていない。 熊さん、この子の目には、一点の曇りもない。 今、幾つだ? お八歳。 ウチの孫も同じ歳だが、お鳥目を欲しがって困る。 この子は手習いはしているかい。 まだで。 あまり嬉しいから、手習いの墨だの筆だの机だの道具を持って来て上げましょう。 ありがとうございます。
金坊、まだ持っているのか、そんな物捨てちゃえ、不浄な物だから…。 やだい、焼芋買って食べるんだい。
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