女子高生が始めた「丹後水中考古学プロジェクト」 ― 2023/07/20 07:11
長寿者が多いことで知られる京都府京丹後市に、長い短信の読者がいる。 昨年、土地の女子高生が水中考古学に興味を持ち、古代から大陸との交易が盛んだったという丹後の海には沈没船が沈んでいるかも知れないと考えたことから、専門の学者を巻き込んだクラウドファンディングに発展、本格的な水中の考古学調査が始まったという新聞記事を送ったことがあった。
女子高生の名は羽間綾音さん、図書館で40年前の1982年に出版された小江慶雄著『水中考古学入門』(NHKブックス)を読んで感銘を受け、丹後地方の水中遺跡について調べ始めたが、故郷の海ではほとんど調査が行われていないことを知る。 そこで水中遺跡が発見されれば、地域の活性化にもつながるのではないかと考え、地元の若者の夢の実現を支援するroots(京丹後市未来チャレンジ交流センター)に相談し、SNSで「水中考古学の専門家を探しています」と発信した。 それに呼応したのが、帝京大学文化財研究所の佐々木蘭貞(らんでぃ)准教授、未成年者がクラウドファンディングの主体になれないため、佐々木さんが代表を務める一般社団法人うみの考古学ラボを主体とし、ボランティアによる研究協力チームがつくられた。 2022年3月からの2か月間で、400万円を超える資金が集まった。
事前調査として、高校生を中心に漁師や地元の歴史愛好家から聞き取り調査で、海揚がり品や海に関わる歴史や伝承などの情報を探った。 また、京丹後市の文化財課や京都府立丹後郷土資料館の協力を得て、海と人のかかわりや交易・航海に関する文献資料、海とのつながりがみられる遺跡を調べた。 その結果から調査地点を8か所(立岩、間人(たいざ)、三津、静、浜詰、箱石浜冲、久美浜湾内、旭漁港)に絞り込んだ。 最終的に、京丹後の西端に位置する旭漁港で本格的な調査を実施することになった。
天然のラグーン地形の残る久美浜湾の西に位置する小さな旭漁港は、江戸時代には年貢米などの積出港として使用されていた。 久美浜湾は内陸との交通の便もよく、物資が集まる場所であったが、湾は浅く大きな船は入れない。 そのため、旭漁港まで小舟で物資を運んで、大型船に積み替えていたと推測される。 また、旭漁港周辺には、「もやい石」と呼ばれる船を留めるための係船機構が存在すると言われていた。
調査チームが実施した、踏査と潜水および水中ドローンの調査で、「もやい石」やそれを立てる「岩礁ピット」、「もやい岩」や岩に縄を通す穴を開けた「はなぐり岩」など、32か所(39件)の係船遺構が確認された。
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