桂二葉(によう)の「天狗刺し」 ― 2023/08/27 07:27
8月21日は、第662回の落語研究会だった。 補助席まで出た満席は、久しぶりだった。
「天狗刺し」 桂 二葉
「転宅」 柳家 三三
「応挙の幽霊」 柳家 さん喬
仲入
「祇園祭」 三遊亭 笑遊
「拾い犬」 柳家 喬太郎
桂二葉(によう)の「天狗刺し」は、令和3年度NHK新人落語大賞を受賞した放送を見て、知っていた。(<小人閑居日記 2022.2.25.>) で、実物を見るのを楽しみにしていた。 浪花のいちびり娘(お調子者)、昭和61(1986)年生れの由、桂米二門下、米朝事務所所属。
万雷の拍手に迎えられる。 おかっぱ頭で、薄緑の着物に白っぽい帯、いきなり高い声で入って、上方落語界の白木みのると言われると、客をつかむ。 入門して、三年修業、師匠の車の運転をして、怒られた。 コインパーキングを知らなかった、24歳になるのに…。 師匠が酒を飲んだので運転する、エンジンをかけアクセルを踏む、ガッ! 修業中なので、これは乗り越えねばあかん、踏みたらへんかと、またアクセルを。 ガッ! ガガッーーッ! 車は、ボロボロ、破門ギリギリになった。
アホな人間が、危うく犬のウンコを踏みそうになった。 ほんまに犬のウンコかいな、臭いを嗅いでみよう。 犬のウンコやな。 ほんまかいな、棒でつついてみよう。 硬いな。 ほんまに犬のウンコかいな。 食べてみよう。 ウワッ! ほんまに犬のウンコや。 踏まんで、よかった。
アホなおっちゃん、無駄の多い世の中だと、甚平さんに銭儲けの相談に来た。 外をウロウロしていて、餅屋の前に出た。 重たい杵を振り上げて、振り下ろす力がものすごい。 何であの重たい杵を振り上げなんならん。 あの力が無駄だ。 そこで上にも臼を置けば、振り上げた時も搗け、往復で搗ける。 えらいことを、考えたな。 上の臼は、どうするんだ、落ちて来るだろう。 それを、相談に来た。 帰ってくれるか。
お前は、前にも銭儲けの相談に来た。 十円札を、九円で仕入れて、十一円で売れば、儲かるって。 ぎょうさん、買(こ)うたら、安くなりませんか。 どこで仕入れるんだ。
食べ物商売やったら儲かるでしょう。 当たったら大きい「スッキャキ」屋になる。 そこらにざらにある牛肉やカシワの「スッキャキ」屋でなく、「テンキ」屋。 「テンキ」屋? 天狗のスッキャキ屋。 物識りに聞いたら、カラス天狗が、数が多い。 堺筋に、間口が三間半のいい場所が見つかったので、手金を打ってきた。 二間半の鳥小屋に金網を張って、カラス天狗を五、六羽入れておく。 一間の調理場で天狗をさばく。 天狗をさばくいうても、「天狗裁き」ちがいまっせ。 珍しいから、流行ると思う。 天狗のスッキャキ屋なら、だれでもいっぺん行ってみたいと思うやろ。 近郷近在から、人が押し寄せる。 カラス天狗、どこで仕入れるんだ? それを、相談に来た。 わしも忙しいんだ。 無責任過ぎる。
だいたい天狗おるかい、わしゃ見たことがない。 そんな…、昔は、おったんやろ、鼻の高い、天狗の絵を見たことがあるやろ(と、泣く)。 天狗は、京都の鞍馬山が本場だ、十羽、二十羽と、おる。 鞍馬天狗、聞いたことがある。 どうやったら、捕まえられるだろう。 天狗は何が好きかな。 大儲けができるんだ、ヨソでは言いなはんな。
アホなおっちゃん、太い青竹をかつぎ、トリモチと縄を持って、大杉が聳え立つ、夜の鞍馬山へ。 奥の院で、深夜の行を終えた坊さん、下の宿坊へ帰る。 扉をギギギィーと。 天狗の鳴き声だ! 気の毒なのは坊さん、アホが、青竹で足をすくったから、バターーン。 天狗が獲れた! ぐるぐる巻きにふん縛ると、痛い!痛い! 天狗、よくしゃべるんだと、さるぐつわをかませる。
四十人前の「スッキャキ」が出来る。 ふん縛った坊さんを担いで、京の町に降りて来る。 町の人は、あれ、何だい? と、びっくり。 ボンサン! ボンサン! ボンサン! あれ、ぐるぐる巻きにされた奥の院の坊さんだ。 アホも、自分が担いでいるのが、ハナペチャンコの人間なのにびっくり。 こんなところで、何してまんねん。 スッキャキ屋じゃないと、天ぷら屋にするか。 なんで? はなから衣ついてまんな。
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