「空樽は音が高い」と、「空樽はよく鳴る」2024/02/28 07:07

 鷲田清一さんの「折々のことば」の朝日新聞連載が3000回を超えた。 その3008回、2月24日は英語で、

Empty vessels make the most sound.

「空(から)の容(い)れ物がいちばん大きな音を立てる」。
これが明治期に翻訳され、「空樽(あきだる)は音が高い」として定着したらしい、とある。

 この諺、私は福沢諭吉の訳、「空樽はよく鳴る」として記憶していた。 「空樽は音が高い」より、ずっといい。 もっとも、桑原三郎先生が、幼稚舎の雑誌『仔馬』249号(平成2(1990)年6月)に書かれた「福澤先生の言葉 解説二十七」「諺」によると、もとの英語の諺(プロヴァーブ)は、

Empty vessels make most noise.

となっているが…。 桑原先生によると、「空樽はよく鳴る」は、明治17年の福沢書簡に出てくるし、『福翁百話』や『女大学評論』にも出てくるそうだ。 「頭の中身が空っぽの人ほど、つまらないことをまくし立てるものだという喩(たと)えです。」とある。

この『仔馬』249号の表紙裏には、「語」として福沢全集第20巻470頁から、「空樽はよく鳴る」をふくむ福沢作の5つが掲げられている。 桑原先生のこの解説は、福沢著作の中に引用された何百という使用例から95個の諺を選び、ちょうど100個の諺を、どこに引用されたかの出典も示して、紹介されている労作である。 福沢作の5つは、下記。

自由は不自由の中にあり
大幸は無幸に似たり
馬鹿は不平多し
空樽はよく鳴る
その心を伯夷(はくい)にして、その行いを柳下恵(りゅうかけい)にせよ

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