自給自足体制への移行は、四世代22世紀までかかる2024/07/15 07:14

 小林奎二さんの『百代随想 自耕自食への下山 日本が生きるために』、現在の超浪費経済体制から自給自足体制への移行は、そう簡単ではない、という。 明治以降、今日の海外依存型の食料供給体制が浸透するまで、100年近くかかっている。 これを新たに自給自足国家に戻すには、やはり同程度の期間が必要だろう。 その期間を四つに分ける。

 第一段階は、国民がその必要性を実感し、自覚し、移行のためのいろいろな準備が始動し、方向付けが確認される期間。 低い自給率の不都合が実感され、賢明な人たちによる発議と多くの真剣な議論、全国民への普及と学校での教育などが必要で、農業に限れば、耕地の確保と「生産世帯」の補充が必要。

 第二段階は、本格的な移行がやや軌道に乗り、多くの試行錯誤を重ねながら逐次進行する期間。

 第三段階は、移行に伴う混乱が一段落し、国民の全てが食料の自立を前提とする、新しい生活に慣れてくる期間。 この時期になると、今の核家族生活から、三、四世代が一つの世帯となる生活への移り変わりも進み、日本の世帯数は半数くらいになっていよう。 そうなれば、現存する農地を潰した宅地は不要になり、一人用のアパートは取り壊してよいだろう。

 第四段階は、最後の成熟期。 それぞれの期間は20~30年程度を要するから、日本が自給自足国家として自立するのは22世紀に入ってからのことになる。 第二世代は、自給自足に関して、これまでの誤りを批判した新しい考え方を叩き込まれる。 このようにして、四つの世代を経ることで、今では考えられないほど平和な静かな日本が完成していることを、小林奎二さんは期待したいとする。

 この間に起きるであろう混乱は、明治の革命前後の大混乱に匹敵するものかもしれないが、その後百年余りの間に起きたいろいろな混乱に比べれば、大したことはないかもしれない。 自給自足改革は、これまでの百数十年の逆行ではない。 明治維新が西欧体制への追随であったのに対して、今度は自立への変革だと、小林奎二さんは言う。