馬場正尊さん、リノベーションの第一人者2024/07/28 07:11

 NHK総合テレビの『プロフェッショナル 仕事の流儀』File.533「見えない未来を見つめる勇気」が、馬場正尊(まさたか)さん(55)だというので、知らない人だが、同じ馬場の縁で見た。 建築家だが、20代で建築を疑った。 リノベーションの第一人者、住む人、利用する人を一変させる、新しいライフスタイルを提案するのだそうだ。 緑内障で視野が1/20ぐらいになっているが、他の感覚が敏感になっているので、トータルでチャラだという。 いつも笑っていて、楽しそうに仕事をしている。 仕事場は下町、景色からいうと柳橋あたり、倉庫をリノベーションしたオフィス(オープン・エー)で、30人の若い社員が、自由な雰囲気で働いている。

 対象は、大型の公共施設から、個人宅まで。 見捨てられた建物の、活かし方を考える。 20年前から、その場所の秘めたる個性を見出して再生すること100件。 設計はもちろん、不動産の発見までやる(東京R不動産)。 山形市立第一小学校、20年前閉校になった建物を、学び舎として再生、各種の教室や店舗、カフェなどとなり、運営にもあたる。 設計するものは「風景」であり、建物を「育てる」のだという。 運営では、ある店の借金の保証までしているらしく、妻の歩美さんが経理を握っている。 高校の同級生で、大学3年(早稲田大学理工学部建築学科)の時、二人でトルコ旅行へ出かける直前、子供を授かったことが判明、旅先から両親に知らせ、反対されたが結婚した。 一度離婚したが、妻が全ての通帳を握る約束で、再婚した。

 「傍流の果てに」という経歴。 佐賀県伊万里市の馬場書店の生まれ、18歳で上京、大学生で結婚したため、金がなく建築コンペの賞金稼ぎに没頭する。 建設会社でなく、大手広告代理店に就職、大型イベントの企画演出を担当して奮闘したが、計画を進めていた1995年世界都市博が中止となる。 休職して、4年後に渡ったアメリカでリノベーションを目の当たりにする。 東北芸術工科大学で教鞭を取り、三年後に2011年東日本大震災に遭遇、学生の提案した復興プランの里山の風景を見て、自分の心に正直にと感じた。

 山形県天童市の公共施設、41年前に建設された市立図書館の、若い人も利用するようなリノベーションを請け負う。 社員の一人のプランから、東西に建物を増築して、カフェやイベントスペースを設けて、市民みんなの「でかい家」を構想する。 従来の書棚や家具に使われていた天童木工の、町の記憶に残る曲線を、新たに加える書棚や家具にも採用する。 リノベーションは、ちょっとした変更の集積で変わるのだという。 天童市役所での、設計プレゼンテーション、「人とまちと時をつなぐ わたしの図書館」というコンセプトは、山本信治市長ら関係者を満足させたようだった。 リノベ完成は2年後になる。

 馬場さんは、高円寺のアパートへ出かける。 かつて塀のあったところや裏側は、芝生の広場になっていて、蚤の市が開かれて賑わい、住人が家族ずれでだらだらと楽しんでいる。 500円でシャツを買って喜んだ馬場さんは、未来を信ずると言う。

 馬場正尊さんの、プロフェッショナルとは? 「新しい風景を探し続けること。建築はもちろんのこと、そこを使う人々とか、そこで起きる出来事とか、それを支える制度とか、仕組みとか、そういうものを含めた全体性をデザインしていくこと。」