『百年 未来への歴史』序章「瀬戸際の時代」2024/08/15 07:16

 朝日新聞朝刊の企画もの『百年 未来への歴史』序章「瀬戸際の時代」は、7月30日に初回があり、「よみがえる「戦間期」の悪夢」「交錯する民主主義と権威主義」「分断する世界 崩される秩序」「力づくの現状変更 暴発を誘うものは」。 現在の状況が、第二次世界大戦前の、民主主義と全体主義(日独伊三国同盟)の対立と同じ構図になっている。 細谷雄一慶應義塾大学教授は、「すでに世界は戦争の時代に入っている」と言っているそうだ。

 8月2日の回は、「持たざる国 逆戻りの日本」、「身の丈合わぬ防衛費急増」、「軍事偏重 いびつなDIME」、「「必敗」報告 聞き入れられず開戦」、「「足元の国力を見つめよ」なお重く」。 DIMEとは、アメリカが安全保障の指導者育成のため設立し米軍の将校や文官らが在籍する米国防大のテキスト「国家安全保障入門」にある、「外交(Diplomacy)、情報(Information)、軍事(Military)、経済(Economy)の頭文字を取った、国家安全保障の構成要素で、その四つを統合して国の安全保障を確保することが、欧米の常識だという。 近年では中国に対抗するため、「技術(Technology)」を加えた「DIME+T」とも呼ばれるそうだ。

 かつての日本は、「国力」から目をそむけて軍事偏重に走った結果、人的・物的破局を招いたとする。 戦前の日本にもDIME的発想で国力を見つめようとしたことがあったとして、「戦争経済研究班」(秋丸機関)や「総力戦研究所」に言及するのだが、その前に、「第一次世界大戦後のワシントン海軍軍縮条約で戦艦の保有制限の受諾を決めた、加藤友三郎海相(後に首相)は「国防は軍人の専有物にあらず」「国防は国力に相応する武力を備うると同時に、国力を涵養し、一方外交手段により戦争を避くることが、目下の時勢において国防の本義なりと信ず」と本国に伝えた。だが日本は1933年の国際連盟脱退に続き、翌年に海軍軍縮条約からも離脱。軍艦建造競争の末、45年に破局を迎えた。」とある。

 8月3日の回は、「外交と世論 危い関係」、「他国への嫌悪 あおり」、「世論とメディアは「共犯」か」、「好戦に傾く言説 やがて社会に浸透」、「ウクライナ侵攻 増す「戦争への不安」」。

 今日8月15日は、敗戦記念日。 来年は戦後80年を迎える。 この企画もの『百年 未来への歴史』は、いま私たちが直面している問いを、戦後だけに限らず戦前、戦中を含めた歴史に重ね、未来へのヒントを考えるもので、来年にかけて随時掲載されるそうだ。 関心を持ち、期待して読むことにしたい。