春風亭一朝の「一分茶番」後半 ― 2024/08/26 06:58
下手(しもて)から、夜回りの奴(やっこ)がトントントンと出て、「曲者、待った」。 「何をこしゃくな」と、拳固を構えて、見栄を切り、はやぜん(早禅)という鳴り物で、立ち回りをお見せする。 長いことは駄目だよ。 立ち回りって、何だ? 喧嘩みたいなものだ。 おら、喧嘩みたいなもん、大好きなんだよ、相手は誰だ。 提灯屋のブラ衛門さん。 ふだんから、癪に障ってる。 芝居だから、お前に当て身を食わせる。 当て身って、何だ? 拳固で、脇腹を突く。 金、返すよ。 拳固を見たら、引っ繰り返れば、いいんだ、芝居なんだから。 拳固癲癇か。 お前が気を失って、ぎゅうぎゅうに縛られる。 金、返すべえ、国では、庄屋様から三番目の家柄だ。 縛るったって、芝居だから、後ろで押えているだけだ、手が出せる。 金、もらっときます。 気を失ってるから、活を食わせて、誰に頼まれたと、詰問する。 いいや、知らねえ。 責められて、小藤太さまと言いかけると、その小藤太が現れて、お前の首をスパッと斬り落す。 お前の首は、前にゴロゴロ転がる。 金、返します。 張子の首だ。 じゃあ、もらっとく。
権助ーーッ、権助ーーッ、早く舞台へ出ろ。 刀、楽屋に忘れて来た。 いいから、出ろ! 壁と一緒に転がり出た。 新しい型、お見せした。 膝、さすってますよ。 色真っ黒で、ちんちくりん。 伊勢屋の若旦那じゃないんだ。 誉めよう、日本一! 後家殺し! ひと殺し! おらが、いつ人を殺した? おらは、権助だぞ。 権ちゃん、ご苦労さん! ゴンボウ焼いて、おっつけろ!
鏡にセリフがある。 ユズリハの御鏡を、押し戴いて「ありがてえ、かっちけねえ、まんまと」、仮名で書いてくれないと、まんま知らねえよ。 ベソかいてる。 誰だ、この野郎、ご当家で十三年、一度だって、まんまを炊き損なったことはない。 「初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても、蓋取るな」 飯炊きの講釈をしているよ。
まんまと宝蔵に忍び入り、奪い取ったるユズリハの御鏡、小藤太さまに差し上げれば、褒美の金は望み次第。 早く、おおそうだ。 夜回りの奴登場「曲者、待った」。 曲者とは誰のこった、何を、こしゃくな。 本当に殴るやつがあるか。 縛られちまいやがった。 うふふ、後ろで押えているだけだ、右手を出し、左手を出し、両手を見せ、ステツクテン。 踊り出しやがった。 芝居が滅茶苦茶になるから、今度は本当にぐるぐる巻きに縛られた。 痛え、痛え! 「いったい、誰に頼まれた、白状しろ」。 「一分もらって、番頭さんに頼まれた」。
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