柳家小里んの「言訳座頭」前半2024/10/30 06:48

 「江戸っ子の生まれ損い、金を貯め」。 どうにもならない時も、どうにかなったそうで。 「大晦日、箱提灯は怖くない」(侍の箱提灯より、商人の弓張提灯が怖い)、「大晦日、猫はとうとう蹴飛ばされ」、「大晦日、どう考えても大晦日」、「押入れで息を殺して大晦日」、「元日や今年もあるぞ大晦日」。

 大晦日、どうにもならない。 甚兵衛さんは、足を棒にして金策に歩いたが、とても足りない。 女房が、お前さんは口下手、口不調法なんで、按摩の富の市さんが、くち口弁、口達者だから頼んだらどうか、一円、別に包んだから、と言い出す。 井戸端で、大家さんを丸め込んだのを聞いたと言う。

 丁寧に頼むんだよ、と言われ、甚兵衛さんは、富の市のところへ。 長屋の甚兵衛さんかい、別に忙しいことはない、上がんなよ。 お願いがあって、来ました。 ワシのところも、金が一文もない、物もない。 金を貸してくれって、いうんじゃない。 これは、足を棒にして集めた金、富の市さんは、くち口弁、口達者だから、頼もうと思って、生(なま)で持って来た。 いくら? 一円。 物を頼まれて、お足をもらったことはない。 ウチに来て、借金の言訳をしてもらいたい。 どんな借金だ? みんな義理のいい借金で。 言訳をしてあげます。 貧乏慣れしていないな、こっちから行って、言訳をしなきゃあ。 順よく、行きましょう。 お前さん、口利いちゃあ駄目だよ。