三遊亭萬橘の「探偵うどん」2024/12/13 07:07

 どうもありがとうございます、と萬橘は空色の羽織、薄茶の着物で始めた。 顔の悪い人と、声の悪い人が交互に出てきて……、楽しんで下さい。 昼間、学校寄席で、ひどい目に遭った、共に、この時間を乗り切りましょう。 皆さん、相手はしないって、顔してる。 ふだんから着物を着ている、噺家らしく。 近所のコンビニ、外国の人が一人で、深夜もやっている。 こちらも気を使って、品出しをしていると、レジよろしいでしょうか、なんて言う。 大丈夫ですよ。 ピッピッ! ちょっといいですか? はーーい。 それ着てるの、着物ですか、いいですね、日本人みたいで。 たまに洋服を着る。 よく知っている人が、「アッ、服、着てる!」 裸の人に言う言葉だ。

 噺家、存在感がないと、いけない。 顔と顔、(ごく近い)これくらいの距離で、後援会の人に気付かれなかった。 デパートの売り場で、肌年齢計ります、というのをやっていた。 私、45歳。 エーーッ!じゃないよ。 未(ひつじ)年。 シベリアンハスキーみたいな若い女の店員が、カメラで見てくれる。 奥に、上司がいる。 若い女が、エッ、信じられない、嘘でしょう、ちょっと見て下さいよ、これ! (上司が見て)どれどれ、本当だな。 (私は)何か? お客さん、四十代の肌ですよ。 見た目だけでは、わからない。

 交番に飛び込んで来た人がいる。 泥棒だ。 自白か? 2百円盗られた。 おしるこ5銭の頃で、4千倍。 そば2銭、1万杯。 盗った奴を、捕まえて下さい。 この辺に、網を張ったから大丈夫だ。

 うどん屋、頼みがある。 屋台を担がせてくれねえか。 子供の頃からの夢なんだ。 嘘でしょ。 汚い恰好で、汚い屋台を担ぎたい。 うどん一杯、食って下さい。 いらない、急いで夢を叶えたいんだ。 実は夢は嘘、この先で十人ばかりと喧嘩して、ボコボコにされるんで逃げて来た、やり過ごしたいんだ。 私は? 俺の着物を着ればいい。 私がボコボコに張り倒される。 俺の目を見ろ、本当のことを言っている。 人相がよくない。 帯に手をかけ、ぐるぐる解き、ねんねこ半纏も着る。 うどん屋、男の手だな。 うどん屋も、トボトボついて行く。 おい、うどん屋、どこまでついて来んのか。 もういいでしょ、返してくれても。

 寒かったな、うどん屋、追いかけられているってのは、嘘だ。 嘘つきは泥棒の始まりっていいます。 もう始まってる。 頭突きで仕事をしたら、2百円も持ってた。 この界隈に網を張りやがったんだ。 聞いてたか。 うどんを一杯食って下せえ。 俺は警察も出し抜いた。 うどんだけに、出汁抜いたんだ! 上手いですね。 警察は、茹で過ぎたうどん、箸にも棒にもかからない。 うどんの上にのっかっているのは鴨か? 葱です。 鶏肉は。 とりにくくて。 うどんだけに、麺どうくさい。

 一杯分のお代は幾らだ? 2百円。 頭突きは、こうやるんだ。 俺は警察だ。 網を張っていた。 一杯、食わせやがったな。

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