田島道治の『昭和天皇拝謁記』 ― 2024/12/26 07:04
2019年8月16日、NHKテレビ「ニュース7」は、初代宮内庁長官・田島道治が昭和天皇との対話を詳細に書き記した『拝謁記』を入手したと報じ、翌17日の「NHKスペシャル」でも詳報した。 岩波書店は、2021年から22年にかけて、『昭和天皇拝謁記―初代宮内庁長官田島道治の記録』(全七巻)を刊行した。 原武史さんが10月に、『昭和天皇の実像―「昭和天皇拝謁記」を読む』(岩波新書)を出したので、こちらを読むことにした。 「象徴」となった戦後の昭和天皇の実像を、『拝謁記』を通してあらわになったその肉声から、明らかにしようというのである。
『拝謁記』(全七巻)は、戦後に二代宮内府長官、次いで宮内庁長官を務めた田島道治(1885~1968)が、主に宮内庁長官時代に昭和天皇とのやりとりをまとめたものに、田島の両長官期の日記、退官後の日記や田島宛の書簡など関連資料から成っている。 原武史さんは、『拝謁記』が記録した天皇の肉声からは、『昭和天皇実録』などによる従来の研究では必ずしも明らかでなかった昭和天皇の等身大の人間像が浮かび上がってきて、戦後間もない時期の象徴天皇制の実態が初めて具体的に解明されたという点で、きわめて価値の高い史料と言えるとしている。
田島が宮内庁長官を務めた1949(昭和24)年から53(昭和28)年までの4年間は、占領末期から独立回復初期の時期に当たる。 中華人民共和国の成立、日本共産党の内部分裂とレッドパージ(赤狩り)、朝鮮戦争の勃発と休戦、警察予備隊の発足、連合国軍最高司令官マッカーサーの解任、サンフランシスコ講和会議、講和条約の発効、血のメーデー事件、そして警察予備隊の保安隊への改編などがあった。 内閣でいえば第三次、第四次吉田茂内閣の時代である。
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