柳家三三の「二十四孝」前半2025/02/21 07:05

 柳家三三、軽快に出てきた出囃子は、♪裏の畑でポチが鳴く の「花咲か爺さん」だった。 ただいまは江戸っ子の噺で、自分も江戸っ子ではなく、小田原の生まれで、江戸っ子というより蒲鉾、高座姿が板に付いている。 昔は、読み書きのできない人がいた。 何してるんだ? 兄貴に手紙を書いている。 お前、字が書けないんだろう。 兄貴も読めないから、大丈夫だ。

 八公、覗くな。 上がりなよ。 立ってないで、座りなよ。 大家さんが、立ったらどうだ。 お前んとこは、三日にあげず喧嘩だな。 毎日だよ。 今朝のは、何だ? 魚金が小アジのいいのが13匹残った、安くするってんで、買った。 水甕の蓋の上にのせて、湯に行って、帰ったら、ない。 かかあに聞いたら、知らねえ、お茶の水女子短大ってんだ。 チョウチンババアも、知らねえよって。 すると隣の家の猫が、屋根の上で大あぐらひっかいて、アジをムシャムシャ食ってやがった。 猫が、あぐらをかくか。 こっちは猫を食ってやろうかと、竿の先に包丁を付けて、追っかけたら、やっこは逃げて、縁の下に入っちゃった。 二人の人間がいて、一人の猫の番も出来ないのか。 隣の家に文句を言おうとしたら、かかあが隣には世話になっている、金を借りてるてんだ。 拳固固めて、かかあの横っつらを…。 なぐったのか? なでた。 なでたら、泣いた。 するとチョウチンババアが出てきた。 チョウチン? 横に皺がある、縦に皺があればカラクサババア、縦横に皺があればチリメンババアだ。 俺のことは、何と言ってるんだ? 大家、くたばりそこない。 嫁をぶつなら、あたしをおぶちって。 おっ母さんを、ぶったのか? やらないのも、角が立つから、蹴飛ばした。 言語同断だ。 アフリカ大陸、ひとっ飛びか。 コンゴ横断。 店立てだ! 出てけ! 「オトワヤー」、江戸っ子だい、本物だ。 喧嘩なら相手になる、外へ出ろ。 じゃあ、謝ろう。 死んだお父っつあん、仕事は教えたが、人の道は教えなかったんだな。

 親孝行、孝は百行の本(もと)と言う、孔子から出た。 唐土(もろこし)に二十四孝という人達がいた。 会ったことがない。 いくたりか、教えてやる。 晋の王祥は、母親が寒中に鯉を食いたいというけれど、至って貧乏、着物を脱いで裸になって、氷の池に腹ばいになった。 氷が解けて、穴が開き、鯉が飛び出した。 恐れ入ったか。 アザラシ、ペンギンじゃないんだろ、氷が解けたら自分が池に落ちる。 孝行の徳が天の感ずる処となって、池に落ちなかったな。

 晋の孟宗は、母親が寒中に筍の羹(あつもの)が食べたいというが至って貧乏、それに大雪だ、じっと天を見て泣いた。 すると、雪が持ち上がって、筍を掘り当てることができた。 孝行の徳が天の感ずる処となったんだ。 もう、そうはねえだろう。

 後漢に郭王がいた。 皮をむいても、むいても、出てこない。 それはラッキョウ。 脚気か。 それはビタミンBが足りない。 孝行、至って貧乏、母親の、三位一体か。 郭王は、子のかけがいはあっても、母親のかけがいはないと、母親に嫁の乳を飲ませようとして、子供を山に埋めに行く。 落涙しながら、鍬をふるうと、鍬の先にカチッと金の釜(塊)が当たった。 お上に届けると、ご褒美を頂いて、子供をよく育てることができ、親孝行も出来た。 孝行の徳が天の感ずる処となったんだ。

 秦の呉猛は、年老いた父親を介護していた。 ゴボウは、父親か、ひっかけ問題だな。 夏、至って貧乏なので、蚊帳が吊れない。 この長屋でも、蚊帳が吊れない家がある、俺ん家だ。  蚊帳がないから、父親が蚊に食われないように、自分の手に粗末な酒を塗って、蚊に食わせる。 その晩は、一匹も蚊が出なかった。 孝行の徳が天の感ずる処となったんだろう。 俺なら、二階の壁へ酒をプーーッと吹き付ける。 蚊が全部、二階に上がったところで、そっと梯子をはずす。