柳家三三の「二十四孝」後半2025/02/22 07:16

 親孝行をする気にならないか。 親孝行をしても、儲からない。 昔は親孝行をすれば、お上が青緡(ざし)五貫文のご褒美をくれた。 私がお上に代わり、月末の小遣いをやって、親孝行をやらせよう。 大家さんが、小遣いをくれるのか、家に帰って、狸ババアに「母上」って、料簡入れ替えてやってくるよ。

 オッカア、今、帰ったよ。 母上は、家か? 奥にいるよ。 隅っこの方にいたな、小さくなった、ひからびたな、母上。 何だよ。 鯉が食いたいだろ? 脈が止まるところだったよ、泥臭いから嫌いだ。 筍は? 歯が悪いから食えない。 すまねえな、母上。

 表に留が行く。 顔色がよくないな。 親父と仕事していたんだが、喧嘩になって、張り倒して出てきた。 お前、名代の親不孝者だぞ。 こうこうのつけたい頃には、キュウリはなし。 さしては茄子も漬けられず。 話をして、進ぜよう。 晋の王祥は、鯉を裏の竹藪に鍬かついで取りに行ったが、天に飛んでボロボロ、金の筍の先に、鯉が突き刺さっていた。 いい心持だ、調子が出てきた。 お向うの亀ちゃん、遊びに来ないか、山へ行って埋めるんだ。 ちっとも、わからねえ。

 一つ、蚊でやっつけよう。 酒、ゆんべの焼酎、裸脱ぎになってプーーッとかけよう。 母上、寝ろ。 寝たくない、まだ日が高いよ。 もったいねえな、呑んじゃった。 そのまま、八公が寝込む。

 八公、起きなよ、仕事へ行きな。 何だ、母上。 やはり、孝行の徳、蚊が一匹も刺していない。 何を言うんだ、おいらが、夜っぴて、扇いでいたんだよ。