金原亭馬生の「笠碁」 ― 2025/02/23 07:46
馬生、落語研究会は25年ぶり、四半世紀、気の利いたお妾さんなら、新しい旦那に代わっていると、始めた。 お釈迦様がサイコロを発明し、一粒で宇宙を表している、その霊力にあずかろうとする。 グリコは一粒で300メートル、大した違いだ。 人が集まらないことを、バクチ(場が朽ちる)。 上がりを、寺銭、やるところを、盆、取られることを、お釈迦になった、という。 お金を賭けるから面白い。 丁半。 鈴木さんが丁、田中さんは半ですね。 はい、二ゾロの丁。 もう、一遍。 金を賭けると、朝までやっている。
碁、将棋は、お金を賭けなくても面白い。 藤井(聡太)さん、今、やってますね。 一手に2時間30分。 もう一人、の、名前が出てこない。 相手も、2時間30分。 楽屋の将棋は、考えてると叩かれる、30分で26番。
相模屋さん、昨日はすみません、根岸の先生の所で一番やってまして。 日に五、六番やってる話をすると、待ったしている内は、腕が上がらない、と言われました。 私たちの碁も、待った無しで、やりませんか。 よござんす、これから待った無しで、やりましょう、上達のために。
そこを切りますか。 今の石、ちょいと向こうにずらして頂けませんか。 近江屋さん、何を言っているんですか、待った無しでやろうと言ったのは、あんただ、待ちませんよ。 大きいな、その隅、一遍だけ、待ったを……、あなたもあとで一度待ったをすればいい。 駄目ですか、私がこんなに頼んでいるのに、あなた喜んでるの。 人間てのはそういうもんですかね、子供の頃から仲の良い友達で、その私が頼んでいるんだ。 十年前のことを、忘れたんですか。 暮の二十八日、真っ青になってやって来て、これだけの金がないと、年が越せないと言う。 私は、融通した。 そうですねえ。 これ、待って。 断然、待てない、待てない。 その先、一月になってお返ししますと言っていたのに、倅が印形を持って上方へ出かけているというので、二月まで待って欲しいと。 私は、待った。 二月末に、耳を揃えてお返しした。 返さなきゃあ、泥棒だ。 (碁盤をゴチャゴチャにする) 壊しちゃったのか、わがままだ。 ヘボ! お前さんの方が、大ヘボだ! ザル! 大ザル! 強情も、いい加減にしないか。 小僧さんを呼びに寄こすから、来てやってんだ。 もう、呼びに寄こさないでくれ。 顔も見たくない、帰れ、消えてなくなれ! こんな家、来るもんか、馬鹿ーーッ!
碁敵は憎しも憎し懐かしし。 よく降るねえ、三日にあげず降っている。 隠居するのが早かったよ、朝から煙草ばかり喫って、喉がヒリヒリする。 碁会所へ行ったら、どうなんです。 駄目だ、皆、強すぎるんだ。 二、三目を争うから面白い。 ゴソッとやられる。 相手は、近江屋しかいないんだ。 あん時、待ったさせてやればよかった。 言いぐさが、癪に触ったんだ。 煙草ばかり喫ってるんだ、もう煙草を買わないでおくれよ。 そうだ、あいつの店に煙草入れを忘れてきた。 傘差していくか。 隠居所には、その傘一本しかない、私があとで買物に出るのに差すんで、困ります。 大山行った時の笠があったな、ホコリだけれど。 およしなさい。 うるさい、うるさい。
貞吉、長松、相撲を取るな。 赤ん坊を泣かすな、奥へ連れて行きなさい。 オッパイ飲ませるなら、こっち向いて出すな、デカイと思って自慢してるのか。 茂造、何で大きな荷物をここに置くんだ、邪魔なんだ、あいつが来ても見えないじゃないか。 早く出かけなさい。 これから伺う三軒目の傍が、相模屋さんの隠居所ですが、煙草入れをお届けしましょうか。 馬鹿、一番大切な質物だ。 どいつもこいつも、イライラさせる。 番頭さん。 相模屋さんを、呼んで参りましょうか。 それは、最後の最後だ。 それでも来なければ、死んじゃいます。 戸袋の前に、お出でになっています。 来てる、来てる…、変な格好だね。 呼びに行かなくていいよ。 碁盤を持って来なさい。 白を向うに置いて、音でひっぱり込む。
いい音だね。 碁石も、碁盤も。 いい萱(かや)の木の本寸法で。 新しい相手が出来たのかい。 店の前を通って、チラッと見るか。 ほら、入って来ますよ。 あれ、行っちゃったよ、あいつは…。 角に、います。 目と目が合ったぜ。 オイッ、店の前をウロウロするな。 煙草入れを忘れたんだ、印伝の。 ヘボになるといけない、一番来るか。 お茶を淹れなさい。 さあ、やりましょう。 こないだのことは、私が謝ります。 待った無しは止しましょう、身体に悪い。 番頭さん、屋根屋を呼んどくれ、雨が漏るようだ。 碁盤を囲む幸せだ、何だい、雨漏りは碁盤の上だけだ。 あなた、まだ笠をかぶっていますよ。
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