テレビドラマ『昭和元禄落語心中』発端 ― 2025/09/01 07:14
落語好きなのに、『昭和元禄落語心中』をまったく知らなかった。 テレビ欄で題名を見て、8月24日(日)午後11時からのNHK総合のドラマを録画しておいて、見た。 第一回「約束」、10回連続、実は2018年10月から放送されたものだそうだ。 原作は雲田はるこの漫画で、羽原大介脚本。
昭和52年春、刑務所にいた男(竜星涼)が、入所中の慰問で聴いた八代目有楽亭八雲(岡田将生)の「死神」に感激していて、出所したその足で弟子入りを頼みに行く。 弟子を取らない八雲が、松田運転手(篠井英介)の車に乗せ、なぜか家に置いて、与太郎と名付ける。 その家には、養女の小夏(成海璃子)がいる、彼女は八雲と二人で黄金期の落語界を支えた二代目有楽亭助六(山崎育三郎)の娘だが、助六夫婦は謎の死を遂げていたらしい。
有楽亭八雲は、繊細で真率に語る、落語と心中したといわれる翳のある孤独の芸風なのに対し、有楽亭助六は稀代の天才といわれ、奔放で明朗闊達な軽い芸風だった。 小夏は、落語家になりたいと思っているが、八雲は女真打なんて聞いたこともないと、許さない。 稽古をつけてもらえない与太郎は、姐さんと呼ぶ小夏が持っている、亡父のレコードやネタ帳を借り、その芸風が気に入り、自分にも合っているとも思われて、小夏に稽古を付けてもらう。
三か月後、八雲と上方の円屋萬歳(つぶらやまんさい・今泉成)との二人会「好色夏夜噺」が浅草雨竹ホールであり、萬歳は与太郎が助六に似ているという。 八雲は、与太郎を呼び、噺は二ツ目になってからおやり、と叱る。 小さくなる与太郎に、いじめ甲斐、からかい甲斐がないな、前座にしてやるって言っているんだよ、と言う。
前座になった与太郎は… ― 2025/09/02 06:58
一か月後の晩夏、与太郎は「寿限無」を演るが、まったく受けない。 小夏は、芸者だった亡母の置屋の娘・お栄(酒井美紀)が女将の料亭「柳しま」に勤めている。 八雲がちょっと話があると、小夏を座敷に呼び、「陰でこそこそあの時の事をさぐっているんだって。お前さんが噺家になって、私の鼻を明かそうってのは、全身全霊で阻止する。女は噺家に向かない。」 小夏が「父ちゃんの噺を根絶やしにしたくない」というと、八雲はその場で「野ざらし」を演って、「助六は今も私の中に生きている。お前さんの中にも……。神様みたいな助六と同じにな」と。
小夏は積極的に、与太郎に稽古を付けるようになる。 二か月後の秋、ヨシキリ組の兄貴分のチンピラが、与太郎を訪ねてくる。 噺家になるという与太郎に、落語なんて下らないと、連れていこうとする。 八雲は、「親代わりをやらせてもらっている。ボロボロにして捨てたのを、私が拾っちまった。この人に聴かせてやんな、下らねえ落語を」と与太郎に言い、一緒に浅草雨竹ホールへ連れて行く。 与太郎の「出来心」は大受けで、兄貴分も笑って、拍手していた。 八雲は、「兄さん、俺にいいことを聞いてくれたね、何で落語なんだって」。 そして与太郎に、「帰ったよ。あの人の親分には貸しがあるんだ。前座の勤めに行っといで」。 小夏には、「お前さん、あれに助六を仕込んだね、不愉快だ。お互い、あんちくしょうのような奴に引っ掛かるように、神様につくられちゃったんだ」と。
三か月後、冬。 八雲独演会で、与太郎は「たらちね」をかける。 助六まるかじり、付け焼き刃の稽古で、寝不足、まったく受けずに白けさせる。 八雲が「鰍沢」を演じている袖で、居眠りしてしまう。 円屋萬歳の息子で、八雲の弟子になりたかった円屋萬月(川久保拓司)には、「八代目の弟子を名乗って欲しくない」と言われる。 八雲は、「破門だよ!」
雪が降る八雲の家の門前、与太郎は小夏に頼んだのだろう。 八雲は「よく眠れたな。助六に弟子入りしろ!」。 与太郎は、「師匠の落語は、俺には絶対できない。師匠と落語のそばに居させて下さい。俺には行き場がない。ここに居場所をつくるしかない。」 「お前さんがやりたい落語、お前自身の落語だよ。破門の代りに、三つ約束してくれ。 一つ、 二ツ目まで面倒を見てやる。私のと、助六の落語を全部覚えろ。 二つ、 助六と約束してできなかったことは、二人で落語の生き延びる道を作ろうということだった。この穴を埋めておくれ。出来ないときは、共に心中だ。 三つ、 絶対に私より先に死なないこと。 小夏、お前さんも。 あの人と私の約束の話を聞かせてやろう、長い夜になりそうだ。」
前座・菊比古(八雲)と初太郎(助六)の戦中戦後 ― 2025/09/03 07:10
『昭和元禄落語心中』第二回「助六」。 八代目有楽亭八雲の昔話。 昭和11(1936)年夏、自分は芸者の家に生れて踊りの修業をしていたが、足の怪我で断念、母親が世話になっていた七代目有楽亭八雲(平田満)に預けられ、落語の修業をすることに。 その時、押しかけてきたのが、お調子者の後の助六、寄せ場で育った親のいない身だが、親代わりの爺さんと呼ぶ初代助六に落語を聞かされていて、いくつか出来、七代目にやってみろと言われ、「野ざらし」をやると、ぶっちょうづらの坊(ぼん、八代目)が笑ったので、一緒の入門を許され、二人して住み込むことになる。
昭和16(1941)年、二人は前座になり、菊比古(岡田将生)、初太郎(山崎育三郎)と名付けられる。 菊比古だけは、初めの約束で学校へ通い、昼は学校、夜は寄席の生活。 二人は何でも正反対、七代目は言う、菊比古は辛気臭い、腹から声を出せ愛嬌が必要だ、初太郎は走り過ぎを何とかしろ、と。 初太郎は、客のつかみがうまく、よく受けるので、楽しそうだ。 差が付いて悩む菊比古に、初太郎は艶笑落語、廓噺が向いているんじゃないか、と言う。 三味線の弾ける菊比古は、手を怪我した下座のお千代の代りを務め、三味線を教え、女ってものが知りたくて、隠れて逢瀬を重ねたりする。
しかし、寄席には臨席の警官がいて、時局に合わない話をすると、「中止」を命じたりする時代になった。 菊比古は、初太郎に色っぽい女がうまい、と言われる。 「明烏」「五人廻し」「品川心中」が出来なくなると聞いて、七代目は「落語を殺そうってのかい、戦さの邪魔だからって」と嘆く。 昭和16年10月、浅草の本法寺に禁煙落語を葬る「はなし塚」が建てられた。 菊比古は、道を断たれたという思いで、やる気が出ない。
昭和20(1945)年4月、住み込みの松田は疎開し、七代目八雲は満州に三か月の慰問へ初太郎を連れて出かけ、菊比古は、七代目夫人の供をしてその里へ行く。 なぜ、私も満州にという菊比古に、七代目は「初はいずれ兵隊に行く身だ、それまで落語をやらせたい」と。 初太郎は、落語を教えてくれた爺さんの形見だという「助六」の名のある扇子を菊比古に渡し、菊比古は初太郎に必ず帰って来ると約束させる。
昭和20年8月、菊比古はおかみさんの田舎で、工場勤めをして、穏やかに暮していた。 だが、三か月過ぎても、七代目と初太郎の行方は分からない。 玉音放送で敗戦を知り、菊比古は、また落語ができると喜び、「初太郎、生きて帰って来い」と叫ぶ。 東京に戻ると、師匠の家は無事で、松田が迎えた。 菊比古は、お座敷の仕事などをしていた。 七代目と初太郎が無事に帰って来た。 寄席に出た初太郎は、さっそく客に「よく生きてましたねえ」と呼びかけ、「野ざらし」を演って受け、師匠に正しい、明るいと、言われる。 菊比古と初太郎は、二ツ目に昇進することになり、日の出荘というアパートで二人暮らしを始める。
Eテレ「100分de名著」『福翁自伝』第1回 ― 2025/09/04 07:03
9月1日のEテレ「100分de名著」『福翁自伝』の第1回は、「カラリと晴れた独立精神」だった。 解説は、斎藤孝明治大学文学部教授(教育学者)。 『福翁自伝』はトップクラスに面白い、まず、時代が幕末から明治という激動の時代、率直で嫌味がない。 口述筆記、喋ったのに手を入れた、そのバランスがいい。 硬軟取り混ぜた、最高の言文一致。
中津の少年時代。 「門閥制度は親の敵で御座る」 古い因習の社会に、「ノー」を突き付けている。 その怒りが、後年の自由平等思想につながる。 上士と下士の差から、解放されたいというエネルギーで、外に飛び出す。 その語り口は、精神を表している。 『増訂 華英通語』で、Vをヴで表したように、既存のものが無ければ、生み出せばいい、と。
藩主の名を書いた紙を踏んで叱られ、神棚の御札を踏み、何でもないので、少し怖かったが、さらに手洗場(ちょうずば、便所)で踏み、お稲荷さんの御神体の石を取り換えておく。 子供ながらも、精神をカラリとして、生まれつきの合理主義。 「仮説、実験、検証」の実証科学のプロセスを踏む、合理主義・科学主義が初めからあった。 権威に対して、疑いを持っている。 上から押し込めていく圧力に対して、「それをなくしても大丈夫なのでは」という実験をやり続けた人生。
拝領の御紋服の羽織より、金の方がよい、一両三分あれば、原書を買う、酒を飲む。 「カラリ」とカタカナで書いているので、湿度が低い。 日々変わる「心」でなく、「精神」という安定したもの。 学問も、ユーモアもある。
「喜怒色に顕さず」の「精神」を、練習して、手に入れた。 格言→心の技→精神。 他人の価値観に左右されない。 自分は、ここにいるんだ。 「独立自尊」。
「浮世のことは軽く視る」 中津の時代から成年になるまで、「莫逆の友(親友)」はいない。 他人に傷つけられない。 少年時代から、確固たる存在。
『福翁自伝』の少年時代からは、「カラリ」とした精神的独立を学べればよい。 幕末明治初期の時代と、超グローバル社会の今とは、よく似ている時代だ。 福沢諭吉は、明るく、ポジティブ、アクティブに生きていくロールモデルだ。
雷門音助の「春雨宿」 ― 2025/09/05 07:05
月が替わっても猛暑日が続く9月2日は、第687回の落語研究会だった。 雷門音助、二ッ目、来年5月落語芸術協会の真打に昇進すると言って、拍手をもらう。 地元は静岡県だと、二人旅の噺に入る。 すぐ着くよ、ケン坊、どうした? ケンちゃん、オーーイ! しゃがんでるよ、崖のところで、危ないじゃないか。 紙をくれ! なんだ。 君塚温泉、あと一時間ばかりで着くよ。 山の中で、暗くなってきたな、家が一軒もないか。
一軒あった、旅館らしい、女の人が出て来た、女中かな。 君塚温泉まで行くんだが、どのくらいある? ヘイ、あの、ケメヅカ温泉け、たんとはねえ、山越え八里だ。 山越え八里か、夜中になる、ここに泊めてもらおう。 足を洗いたい、バケツに水を。 谷底まで汲みに行く。 ケメ子さーーん! バケツに水を汲んできた。 荷物を下ろす。 靴を脱がしてあげましょ。 靴下まで脱がせてくれるのか、ケメ子さん。 おら、ケメ子でねえ、ケメ子だよ、ケメヅカ温泉のケメ、「ケメの中のケメ」「ケメぼこのケメ」「ケメとぼくのケメ」。 なに、泣いてるんだ。 足を洗ってて、国のことを思い出した。 毛むくじゃらの男か? 夕方、父っつあんが、牛を引いて帰って来る。 その牛の足を、洗うんだ。
どうぞ、こちらへ。 汚い部屋だな、でも障子を開けると、梅に鶯か。 風呂、沸いてるか? 沸いてます。 じゃあ、裸になって。 駄目だよ、途中に交番がある。 そんなに遠いのか? ここはステン、風呂は本店、ケメヅカ温泉にある。 往復十六里だ、飯にしよう。 飯、出来てます。 お酒の、お酌を頼む。 エナカ者で、すまねえ。 いい酒だ。 そっちの姐ちゃんは? 別の国、秋田。 秋田の名物は何だ? 名物はビズン、あとはフキ。 フキかい。 大きなのは畳六畳敷、十人は雨宿りが出来る。 ほらフキだ。 民謡の秋田おばこを、歌ってくれ。 ん、じゃあ、秋田音頭をやろうかね。 ヤットナーー、エー、ソレ、ソレ、ソレ! ♪ハッ、ガッコの先生が、ゲンタマ落として、生徒に拾われた。 コズケイに頼んで、拾いにやったら、味噌汁にして食っちゃった。 えっ、先生のゲンタマを食った? わしゃ、好きだよ。 ゲンタマ、こんにゃく玉のことだ。
味噌汁、田舎味噌だから、熱いうちにどうぞ。 塩っ辛いな。 味噌が足りないから、塩を入れた。 何か、ジャリジャリするな。 水は谷底まで汲みに行くんで大切、足を洗ったバケツの水を使った。
部屋の中まで、雨が降って来たぞ。 スゴ降りになったら、寝られるか? 長靴と傘があれば、寝られます。 長靴と傘はあるのか。 イーエー、本店に行って、寝て下さい。

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