雷門音助の「春雨宿」2025/09/05 07:05

 月が替わっても猛暑日が続く9月2日は、第687回の落語研究会だった。 雷門音助、二ッ目、来年5月落語芸術協会の真打に昇進すると言って、拍手をもらう。 地元は静岡県だと、二人旅の噺に入る。 すぐ着くよ、ケン坊、どうした? ケンちゃん、オーーイ! しゃがんでるよ、崖のところで、危ないじゃないか。 紙をくれ! なんだ。 君塚温泉、あと一時間ばかりで着くよ。 山の中で、暗くなってきたな、家が一軒もないか。

 一軒あった、旅館らしい、女の人が出て来た、女中かな。 君塚温泉まで行くんだが、どのくらいある? ヘイ、あの、ケメヅカ温泉け、たんとはねえ、山越え八里だ。 山越え八里か、夜中になる、ここに泊めてもらおう。 足を洗いたい、バケツに水を。 谷底まで汲みに行く。 ケメ子さーーん! バケツに水を汲んできた。 荷物を下ろす。 靴を脱がしてあげましょ。 靴下まで脱がせてくれるのか、ケメ子さん。 おら、ケメ子でねえ、ケメ子だよ、ケメヅカ温泉のケメ、「ケメの中のケメ」「ケメぼこのケメ」「ケメとぼくのケメ」。 なに、泣いてるんだ。 足を洗ってて、国のことを思い出した。 毛むくじゃらの男か? 夕方、父っつあんが、牛を引いて帰って来る。 その牛の足を、洗うんだ。

 どうぞ、こちらへ。 汚い部屋だな、でも障子を開けると、梅に鶯か。 風呂、沸いてるか? 沸いてます。 じゃあ、裸になって。 駄目だよ、途中に交番がある。 そんなに遠いのか? ここはステン、風呂は本店、ケメヅカ温泉にある。 往復十六里だ、飯にしよう。 飯、出来てます。 お酒の、お酌を頼む。 エナカ者で、すまねえ。 いい酒だ。 そっちの姐ちゃんは? 別の国、秋田。 秋田の名物は何だ? 名物はビズン、あとはフキ。 フキかい。 大きなのは畳六畳敷、十人は雨宿りが出来る。 ほらフキだ。 民謡の秋田おばこを、歌ってくれ。 ん、じゃあ、秋田音頭をやろうかね。 ヤットナーー、エー、ソレ、ソレ、ソレ!  ♪ハッ、ガッコの先生が、ゲンタマ落として、生徒に拾われた。 コズケイに頼んで、拾いにやったら、味噌汁にして食っちゃった。 えっ、先生のゲンタマを食った? わしゃ、好きだよ。 ゲンタマ、こんにゃく玉のことだ。

 味噌汁、田舎味噌だから、熱いうちにどうぞ。 塩っ辛いな。 味噌が足りないから、塩を入れた。 何か、ジャリジャリするな。 水は谷底まで汲みに行くんで大切、足を洗ったバケツの水を使った。

 部屋の中まで、雨が降って来たぞ。 スゴ降りになったら、寝られるか? 長靴と傘があれば、寝られます。 長靴と傘はあるのか。 イーエー、本店に行って、寝て下さい。