「鎌倉仏教の繁栄、もう一つの秘密」2011/08/20 05:56

 西岡秀雄先生が2008年に出版された『寒暖700年周期説』(PHP)をパラパ ラ見ていたら、「鎌倉仏教の繁栄、もう一つの秘密 寒期の力を利用した親鸞と 日蓮」という章があった。 鎌倉時代は、寒暖700年周期説で、もっとも代表 的な寒期とされている。 西岡先生は、平安時代を描いた映画やテレビで、役 者が足袋をはいていれば、時代考証の誤りだという。 足袋が発明されたのは 鎌倉時代、“単皮(たんび)”あるいは“踏皮(たび)”、一枚の皮で足を包み、それ を紐で巻いて用いたのが、足袋のはじまりだった。 寒くて、裸足では耐えら れなかったからである。 湯を浴びるだけだった入浴も、湯舟につかる方法に 変り、脱いだものを風呂場の土間に置いておくのに、一枚の布を敷く“風呂敷” が発明された。

 そこで日蓮と親鸞である。 『日蓮聖人遺文』という日蓮の書簡集に、身延 の生活を描いた部分があり、当時の異常な寒さを伝えている。 油も酒も凍り、 髭も凍り、鼻水はツララになる。 日蓮は酒好きだったという。 酒を慎む戒 律を破ったのは、極寒のためで、鎌倉仏教が、極めて現実的な色彩を帯びてい るのも、背後に極寒という条件があったがための当然の成り行きだと、西岡先 生は考える。 親鸞の「肉食妻帯」を認める教えも、異常な寒さと冷害で、食 料が不足し、肉さえも食べないではいられなかった。 肉食は性欲を昂進させ るから、妻帯にむすびつくとする。 気候的、生理的にできない戒律は、長続 きするはずがなく、変更するか、解釈を変えざるを得なくなるというのである。

 西岡秀雄先生は、学生時代に日米学生会議で渡米し、1939(昭和14)年に文学 部史学科を卒業、先生の一つ話に、面接で「考古学専攻」と答えたのを「航空 学」と聞かれて、「1940~1946陸軍航空隊に服役(『気候700年周期説』の著 者紹介にそうあるのは、無念の気持の表れだろうか)」したというのがあった。

 <小人閑居日記>で毎日、雑学を書き散らしている。 その源になっている 何にでも興味を抱いて面白がる好奇心、そしてユーモアを尊ぶ気持は、西岡秀 雄先生の影響が大きいのかもしれないと思う。