三遊亭遊馬の「佐野山」 ― 2011/08/29 05:37
黒紋付に、鼠の袴、三遊亭遊馬は、落語研究会初登場だという。 声の大き いのが自慢らしい。 笑点に出ている小遊三の弟子だそうだ。 「佐野山」も 珍しい噺だ。 落語研究会では、2008年9月に歌奴を継いだ歌彦が、直前の6 月、「谷風情相撲」という題で演っている。
遊馬はいきなり江戸時代の寛政年間、と始めた。 四代目横綱谷風、31連続 優勝、ただ強いだけでなく人格者で、「相撲の神様」と現役からも慕われていた。 一方、佐野山ゴンペイ、親孝行で、父親の看取り看病をしていて幕下どんじり まで落ち、引退寸前となった。 それを聞いた谷風が、興行主に掛け合い、六 日目の結びに谷風-佐野山の一番を組ませた。 5連勝対5連敗、事情通がこ れは遺恨相撲で、谷風が新橋のいーーい女の芸者に惚れたら、それが佐野山の 女だった。 恋の怨みで、投げ殺すと『週刊ポスト』も書いて、大変な評判に なった。 佐野山が回しに触れば二十両、四つに組んだら三十両、双差しで五 十両、勝った時は、店を畳んで百両都合しようというタニマチも現れる。 大 盛況、満員札止。(太鼓に続いて、賑やかなお囃子が入る、上方の噺のようだ) サ、ノ、ヤ、マーッ! 全員が、佐野山の応援。
佐野山の右手が回しに触る。 四つに組んだ。 双差しにならんかえ。 横 綱が汗をかいている。 同体で、土俵の下へ。 横綱は、足を出してから、佐 野山を抱えて、飛んでいた。 佐野山の勝ち。 仙台侯からの大枚百両で、寝 ていた父親の看病をすると、全快した。 佐野山は漬物屋になった。 なぜ漬 物屋になったか、佐野山は名代の「コーコー息子」
珍しい噺はつまらない、という例に洩れない。 遊馬、声の大きいのだけが 取り柄というのでは困る。 考えてみれば、谷風生涯唯一の八百長相撲という 噺を、長年当り前に演ってきて、世間も聴いてきたわけだ。
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