小遊三の「提灯屋」2012/09/04 00:58

 出囃子は「ボタンとリボン」、「笑点」の小遊三である。 この会では珍しい と思って、わがアーカイブスを見ると、2004.12.24.「引越しの夢」、2006.1.23. トリで「文違い」、10.31.「鮑熨斗」、2008.12.25.「蜘蛛駕籠」と割に出ていた。  それなのに印象が薄い。 毎回くさしたり、難を言ったりしていた。

 職人には字の書けない、読めないのがざらにいた。 いい女のちんどん屋が ニッコリ笑って広告をくれた、俺に気があるに違いない。 どこに、何屋が出 来たのか。 町内の若い連中、読めない奴ばかり、次に回せ、となる。 昔の 引札は、駿河半紙にコンニャク版だったから読みにくかったが、今は活版だか ら、と能書きはいうけれど、読めないのや、大きい字は大きい字、小さい字は 小さい字、という奴もいる。 そば屋なら長い字、寿司屋なら握ったような字、 鰻屋ならにょろりとした字か。 龍の絵があれば中華料理、刺すやつの絵があ れば洋食屋、鶏の絵なら「かしわ」鳥料理、○ならスッポン料理、なのだが…。  どこに、何屋が出来たのか、誰もわからない。 次に回された奴、「広告の興廃 この一戦にあり」。 荷を背負って坂を下りたら危ない、物には弾みがある。  端(はな)の字が読めれば、弾みがつくのだが…。

 米屋の隠居さんが通る。 あっしだけ読んで、物に角が立つといけねえ、昔 から引札、天紅なんて言っていたが、駿河半紙にコンニャク版、瓦版だったか ら読みにくかったけれど、と言いつつも、食い物屋でなく、唐傘・提灯店の広 告と判る。 提灯屋かい。 開店祝いに六日間、紋の描き賃が無料、もし注文 の紋が描けない節は、提灯をタダで差し上げる、とある。

 若い連中、つぎつぎと無理な注文を出す。 ぶら提灯を一つ、紋は鍾馗様が 大蛇を胴斬りにしたやつ。 判じ物ですな、判りかねます。 剣で斬る、大蛇 の片っ方がウワで、片方がバミ、剣酢漿(けんかたばみ)。 紋は「仏壇に地震」。  竜胆(りんどう)崩し。 「髪結床の看板が湯に入って熱い紋」。 ねじ梅。  「算盤の掛け声が八十一で、商売で儲かって、道楽を始めた。嫁さんが意見が ましいことをいうから、男の働きだ、出ていけと、かみさんを離縁した紋」。  八十一が九九、儲かったから利、かみさんが去ったから、合わせて「くくりざ る」。

 出す提灯、出す提灯、タダ取られた提灯屋、そこへ隠居までやって来た。 こ いつが元締めか。 一番高い高張提灯を、それも一対で、家まで届けてほしい、 と。 紋は丸に柏だ。 元締めだけあって、難題を言ってきやがる。 丸に柏、 丸に柏、と……あっ、わかった、スッポンにニワトリだろう。

 噺自体もつまらないものなのだろうが、小遊三、例によって全く感心しなか った。 一般に無筆の噺は、現代では想像もつかず、面白くない。 クイズ番 組で簡単な問題が答えられない、タレントやスポーツ選手を笑うようなものだ ったのだろうか。