破傷風菌純粋培養のきっかけ2012/09/08 01:03

 テルモ株式会社「医療の挑戦者たち」の新聞広告シリーズ、二回目(7月3 日)は、「ドイツ料理から発想した北里柴三郎の画期的な細菌培養装置」。 「日 本近代医学の父」と呼ばれる北里柴三郎の最大の業績は、ドイツ留学三年目に 成し遂げた「世界初の破傷風菌の純粋培養」だといわれる。 当時、ドイツで は破傷風菌の純粋培養は不可能とされていた。 研究所の同僚の下宿に誘われ ると、そのガールフレンドが料理を作っていた。 日本の茶碗蒸しのようなも のを作るのに、蒸し器のフタを開け、器に木の串を差し込んでいる。 何をし ているのかと聞くと、奥の方が固まっているか確かめているという。 その瞬 間、北里は躍り上った。

 古クギを足の裏に刺したとき、破傷風の病巣は傷の表面ではなく、奥の方に できる。 つまり、破傷風菌は酸素の届かないところで増殖するに違いない。  北里は料理をヒントに、破傷風菌が酸素を嫌う「嫌気性菌」であることを見抜 いたのだった。 北里はさっそく、酸素を排除できる細菌培養装置を自作し、 ついに1889(明治22)年、破傷風菌の純粋培養に成功、翌年には破傷風の血 清療法を考案した。 血清療法に用いられた基本的な概念は、今日では「抗体」 として現代免疫学の確かな礎となっている。

 「医療の挑戦者たち」、三回目(7月13日)は、「「日本近代医学の父」は多 くの医学者たちの育ての父でもあった」。 北里研究所からは、多くの世界的な 研究者が輩出した。 赤痢菌発見の志賀潔、黄熱病の研究で名を成した野口英 世、狂犬病の予防液を作った梅野信吉、梅毒の特効薬・サルバルサンを創製し た秦佐八郎など、多士済々である。