柴本幸と「笛」2012/09/28 02:13

 『薄桜記』で「可哀想」なヒロイン千春を演じた柴本幸(ゆき)は、柴俊夫 と真野響子の一人娘だ。 幼稚舎から慶應義塾で学び、2006(平成18)年に文 学部を卒業した。 2007年のNHK大河ドラマ『風林火山』で、ヒロイン諏訪 の由布姫役に抜擢された。 新人が大河ドラマの主役級に選ばれるのは、初め てのことだった。 武田信玄(晴信)を演じたのが、この6月に四代目市川猿 之助を襲名した“亀ちゃん”市川亀治郎だった。 亀治郎、喜熨斗孝彦も1998 (平成10)年に慶應義塾大学文学部国文学専攻の卒業である。 晴信と由布姫、 8年の先輩後輩の共演だったことになる。

 確か『風林火山』で、由布姫が篠笛を吹く場面があった。 実は柴本幸、慶 應女子高時代の2000(平成12)年3月に、第21回全日本リコーダーコンテス トの高校生独奏の部で金賞を受賞、翌年の平成12年度塾長賞に選ばれていた。

 先日『三田評論』の昨年12月号をパラパラやっていて、偶然、柴本幸が「社 中交歓」の『笛』に「気まぐれな笛との二十年」という一文を寄せているのを 見つけた。 初めて「笛」を手にしたのは、5、6歳の頃、母(真野響子)が学 生時代に使っていたという、くすんだ緑色をしたリコーダーだった。 幼児の 指には、穴が大きすぎて、息を吹き入れても、フガフガして音にならず、吹き 続けていて、酸欠になったという。 そこに始まった笛との付き合いは、二十 年余り、師匠である吉澤実氏の音色を聴いてから、何かが開眼し、弟子入りし て、上記のコンテストに入賞したという。 「とにかく笛というのは、この軽 さがいい。今は仕事でご縁のあった篠笛を嗜(たしな)んでいるが」というの は、『風林火山』だろう。 「何にせよ笛一本あればどこでも吹けるので、昔 から旅の必需品である。しかも、これほど自分の状態が素直に出てしまう楽器 も少ない。シンプルなだけに、心のバロメーターになり得るのだろう。」 「この原稿を書いていたら、「私も吹いてよ!」というリコーダーの声が聞こ えた気がした。縦笛から横笛に浮気して早五年、久しぶりに元の鞘に戻ってみ ようかと思う」とあった。