日吉の公開講座「日本ってなんだろう」2012/10/08 02:01

 土曜日の午後、50年ぶりに日吉の教室に座って、学生気分を味わっている。  第4校舎J24番教室3時限目1時から2時半までと、4時限目2時45分から4 時15分までの二駒。 日吉キャンパス公開講座「日本ってなんだろう」を受講 しているからだ。 9月29日に始まって全8回、副題は「東北の魅力再発見」。  同年輩か、少し上の、それも昨今の文化的な行事一般と違い、男性の多いのが 際立っている。 テーマのせいだろうか。

 初日は赤坂憲雄学習院大学教授の「東北学、新たなステージへ」と、佐谷(さ や)眞木人恵泉女学園大学教授の「東北の義経伝説と文学・芸能」だった。 つ らい話と、興味深い話、それぞれに気持がこもっており、大学の学問に触れて、 強い刺激を受けた。

 赤坂憲雄教授、以前テレビで『遠野物語』を語っているのを拝見したことが あった。 3.11東日本大震災に遭遇して、ご自身が20年間にわたって組織し てきた「東北学」という知の運動が、東北の何がわかっているつもりだったの かという、深刻な懐疑にさらされ、無力であることを悟ったという。 いま一 度、ひたすら被災地を〈あるく・みる・きく〉の旅にとりかかり、生々しい現 実を引き受けながら、「東北学」の再建、第二ステージを創る覚悟を決める。 そ こで考えてきたという一端を披歴してくれた。

 被災地は過疎化、少子高齢化が進んでいた地域だった。 フィルムが早回し され、30年後の世界が早く招きよせられてしまった。 5月、ある半島の三つ の村でコミュニティを解体する解散式があった。 そんな例は、被災地の至る 所にある。 復興の槌音はほとんど聞こえて来ない。 誰もが途方に暮れてい る。 それが現実だ。

 大震災で、東北が製造業、ものづくりの拠点であることが明らかになった。  南三陸のある所では、おばさん達が自動車部品の細かい配線をする仕事をやっ ている。 検査の極めて厳しい作業だが、時給300円くらいという世界なのだ。 賃上げの要求でも出せば、すぐに仕事を引き上げられてしまう。 こういう東 北の下請けの下請けの仕事、アジアにつながる賃金の安い差別の構造が、日本 の製造業を支えているのだ。