喬太郎の「錦の舞衣(下)」その一2012/10/24 02:05

 喬太郎の「錦の舞衣(上)」前半は、6月26日に聴いて、この日記の7月6 日から三回、「錦の舞衣」と三遊亭圓朝の翻案物、喬太郎の「錦の舞衣(上)」 前半、後半に書いている。

 絵師の狩野毬信は根津の家に、大坂で起きた大塩平八郎の乱の咎で追われて いた、大塩の親族宮脇数馬をかくまっていた。 そこへ奉行所の連中が「御用、 御用」と踏み込んで、数馬は切腹、毬信は引き立てられて、厳しい詮議を受け ることになる。 同心石子伴作は、お須賀を船宿に呼び、長く須賀にご執心の 吟味与力の金谷藤太郎の胸先三寸で、毬信は牢を出られるかもしれぬ。 一晩 言いなりになれば、魚心あれば水心、操を捨てて操を立てるということもある、 もうすぐ金谷の旦那がここに来る、心を決めておしまいなさい、と説得する。 

金谷は、師匠に酌をしてもらうと酒がうまいな、気晴らしに一杯やんな、と 言う。 毬信は牢内で責め苛まれて、辛い思いをしている、石を抱かせられた り、いろいろで、皮が破れて、塩を擦り込まれたり…。 俺も師匠に岡惚れし て十一、二年、その間に家内も死んだ。 亭主がかわいいだろう、惚れ合って 一緒になった仲だ、死なねえようにしてやりたいものだな。

金谷が席を立つと、石子は、あれだけ旦那が言っているんだ、コロッといっ ちゃいなよ、旦那は遊ぼうってんじゃないよ、本心だ。 脇差を見たか、お前 と会う時に差してくる金谷家代々の正宗。 お腰のものを預けて下さいませ、 と言ってみねえな。 武士の魂を預かってみなよ。 ただ抱かれるだけではな く、魂あってのことだ。

金谷が戻り、石子、なんだか眠くなったな、横になろうか。 無理強いをす るなよ、と言われて、石子は席をはずす。 旦那、お腰のもの。 正宗だ、須 賀、お前に預ける。 よろしいんでございますか。 お前の方が大事だ、脇差 のように添うてくれるとうれしいんだが…。 お須賀は、手をついて、「旦那」 と言う。 二人は、一つになりました。