権太楼の「へっつい幽霊」後半 ― 2015/06/09 06:38
熊さんと銀ちゃん、二人で担ぐが、銀ちゃん、箸より重い物を持ったことが ない。 転んだ拍子に、へっついの角が割れて、コロコロと出たものがある。 出た、出た、幽霊の卵。 お前のところの前だ、お前んちの土間に入れとこう。 出たものを、出刃で差す。 金だ。 すごいですね。 ヒイ、フゥ、ミイ、チ ュウチュウ、タコ、カイナ、銀貨30枚、300円ある。 熊さん、仕事は折半で したね? 150両、お前に上げるよ。 あの、熊さん、さっきの50銭。 お前、 こまかいね。
これから、吉原に行って、花魁と遊んできますから、ワーーーッと。 150 円と50銭、すっかり使った。 楽しかったね、良かったね。 熊さんは、2倍3倍にしようと賭場へ行ったが、すっかり裏目、悪銭身に着 かず、すってんてんになった。 銀ちゃん、まさか、そっくり使っちゃあいな いだろう、そんなバカじやないよな。 熊さん、お金、貸して。
しようがないな、寝るか。 熊さんは、グーーツと寝るが、銀ちゃんは、ゆ んべの余韻にひたる。 楽しかったな、花魁とほっぺたをつねつねし合って、 痛い痛い、面白かったね。 どこかで遠寺の鐘がボーーンと鳴ると、青白い陰 火がチョロチョロ。 金、返せ。 つねつね、楽しかったな、花魁の手は冷た いね、ワーーッ! 出たッ。 悲鳴で、熊さんが起きた。 なんだ、借金取りの 幽霊か、銀ちゃん、おれんとこへ行って寝ろ。
お前の家へ行って来た、すげえ家だな。 若旦那が、幽霊の金を使って、取 り殺されるって話したら、300円出してくれた。 10円銀貨で、ある所にはあ るもんだ。 幽霊が出たら、つっ返してやれ。 幽霊と、裏や馴染になりたく ない、熊さん、返して下さい。
熊さんちに、へっついを運ぶ。 出て来い、いつまで待たせるんだ。 昼間 から夕暮まで待って、ボーーン。 幽霊、熊さんの勢いに押されて、考え込む。 お待ち遠おさま。 蕎麦の出前、頼んでない。 あっしは、左官の長兵衛、白 無垢鉄火で、丁半が大好き、名前から丁の目にしか張らない。 大当りした300 円を、へっついに塗り込んだ、その晩、フグで一杯やって、当っちゃった。 当 る時は、当る。 地獄の沙汰も金次第、へっついの金を出してもらおうと、出 るんだけれど、親方だけですよ、話を聞いてくれたの。
わかったよ、300円そっくり持って行こうってわけじゃないだろう、こっち にもいくらか。 はじこうとしてるんですか。 手前の誠意だ、世間じゃ半分 というじゃねえか。 一割でしょ。 出るとこへ、出ようじゃねえか。 私は 出るところへ、出られない。 いやなのかよ。 俺のへっついだよ、これだっ て高かった。 ウソでしょ、1円つけてもらったんでしょ。 見てたのか。
150円じゃ、半端だな。 実は、俺も半端なんだ、ひとつやるか。 道具は あるんですか。 見て見ろ、よく転がるだろ。 いいねェーー、いいねェーー。 お前、目が生きてきたな。 さわらせて下さい、あーあ、いい。 妙な手つき すんな、いくら賭ける。 幽霊は時間がないんです、もう帰らなきゃあなんな い、150円全部、丁へ。 度胸がいいな、俺は半に150円。 五六の半。 あーあ、ドスン。 幽霊ががっかりしたの、初めて見た。 親 方、もう一勝負。 よそうじゃないか、お前が金を持ってないの、知っている んだ。 いいえ、あたしも幽霊だ、けして足は出しません。
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