三遊亭わん丈の「紙入れ」2020/02/01 07:23

 1月21日は、第619回の落語研究会だった。

  「紙入れ」    三遊亭 わん丈

  「松竹梅」    柳家 小志ん

  「寝床」     桃月庵 白酒

        仲入

  「大工調べ」   三遊亭 遊馬

  「柳田格之進」  三遊亭 歌武蔵

 わん丈、黒の羽織に煉瓦色の着物、襦袢が黒だった。 去年の4月に「近江 八景」を聴き2回目、落語研究会は噂で、客が笑わない、開口一番はロビーに いて入ってこないといわれている。 某国営放送は笑い屋さんを呼んでいると いう都市伝説があるが、TBSは笑わない屋さんを呼んでいるのか。 師匠の円 丈は75歳、初めは大師匠の円生に古典を習った。 師匠は志ん朝が好きで、 志ん朝は25分の噺を20分に詰めて出来る。 兄弟子の先代円楽は、25分の 噺を30分にするから嫌いだと…、冗談だけれど…。 今日のテーマは、話を 延ばす。 あらすじは、新吉という若い者、出入りのお店の旦那とおかみさん がいて、新吉とおかみさんが仲良くなる。 この噺、飲んで、酔っ払っている 時にお願いをして、菊之丞さんに稽古をつけてもらった。 いいよ、いつでも 教えるって、言ってくれたんで、涙流した。 お宅に伺って、ご馳走になって、 飲んでいた、師匠のおかみさんは若い色っぽい人で(NHKの藤井彩子アナ)。  その内に師匠がお風呂に入ったんで、おかみさんと二人になった。 これ、稽 古が始まったの?

 新さんはウブなんだから…、今夜は旦那が箱根だから、泊って行ってもいい んだよ。 新吉はヤケ酒を飲んで、先に布団に入る。 おかみさんは戸締りを して、派手な色の長襦袢になって、布団に入ってくる。 (わん丈は、自分の 黒い羽織を掛布団に見立てて、かざし、客席に向けて顔だけ出し…)この所作 は、私が初めてやる、史上初のもので。 表で旦那の声がする。 裏から逃げ ておくれ。

 驚いたよ、旦那が帰って来ないっていうから…、あっ、忘れ物をした、紙入 れを忘れた。 あれ、旦那は俺のだって知ってる。 旦那にもらったんだ、そ れにおかみさんの手紙が入っている。 あの旦那は怖い、夜っぴて逃げようか、 滋賀県ぐらいまで行けるが…。 夜が明けたら、旦那の所へ行ってみよう。 殺 そうか。 忍び寄る、怪しい影。 あっ、旦那。 てめえ、よくやりやがった な。 コブシを振り上げてくるところを、持って来た刀で、バッサリ。 アー ーア、嫌な夢を見た。

 旦那、起きてたよ、煙草喫ってる。 おはようございます。 新吉じゃねえ か、こんな朝早く、どうしたんだ。 暇乞いに伺ったんで。 どこへ行くんだ。  滋賀県に。 何か、この町内にいられねえようなわけでも出来たのか。 昔か ら島流しっていうが、滋賀流し…。 女でもしくじったか。 お前は、いいソ ッポをしてるんだ、どんどんやれ。 どこの女だ、何なら俺がまとめてやろう。  他人(ひと)の女房だけはよしなよ。 ですよね? 馬鹿だな、他人の女房と 枯れ木の枝は、登りつめたら命がけ、という。

 その旦那ってえのは、知っているのか? 知っているんでしょうか? 間の 悪い旦那だな、見られたんか? 見られたんでしょうか? 何っ、紙入れを置 いてきて、中におかみさんの手紙が入っていたのか。 それを読まれたのか?  読まれたんでしょうか?

 新さんたら、話はみんな聞いていましたよ。 旦那の留守に、そんなことを しようというおかみさんだよ、そこにぬかりはないと思うよ。 新さんをこっ そり帰すと、ちゃんとそこいらを見回して、紙入れなんかも仕舞っておくだろ う。 万一、見られたって、その旦那、爺さんなんだろう、喧嘩すりゃあ勝て るよ。 そうだ、そうだ、新吉、こいつの言う通りだ。

柳家小志んの「松竹梅」2020/02/02 07:53

 小志ん、腰を落とし、左手を突っ張って、出てくる。 黒の羽織に、薄いク リーム色の着物。 42歳で、ライバルは海老蔵さん、と。 いろんな所で演る。  ロータリークラブの会で演ったが、途中、ガバナーが帰ったら、みんなが送り に行って、誰もいないところで南京玉すだれをやっていた。 結婚式の司会も やる。 清太郎さん、香織さんの式で、「シェイタロウさん」と、いきなり噛む。  親戚のおじさんが聞く、柳家小志んてぇと、やっぱりプロ目指してんの? や っぱり落語やるの? 結婚式では忌み言葉がある、親類のお母さんが落語好き で、「死神」知ってる? と聞く。 ニコニコしていたら、知らないの? と。 今 は、〇〇ホテル、〇〇文化会館とかでやるが、昔は家でやった。

 松さん、竹さん、梅さんの所に、三人揃って来てほしいと、伊勢屋の小僧が 手紙を持って来た。 読めない。 竹、封を切ったから、読め。 俺が付き合 った字がない。 梅は? 残念、絵が一つもない。 三人して、からきし読め ない、横丁のご隠居、物知りだし、お調子者だ、ワーーッとおだてりゃあ、読 んでくれる。 拝見しましょう。 三人無筆、読めない、書けないのかい、今 時、おい婆さん、こいつら無筆なんだ。 ハイハイハイ、ウンウンウン、結婚 式の招待状だよ、今晩の婚礼にお呼ばれだ、ご馳走してくれる。 飯、食わし てくれるのかい、ありがてえ。 含みがある、三人並ぶと松竹梅、座を賑やか に、陽気にする、余興、隠し芸をやって欲しいんだな。 オットセイと一緒か。  仲間の宴会で大笑いになったことがある。 まず帯を解く、着物を脱ぐ、長襦 袢を脱いで、肌襦袢も脱ぐ、足袋もフンドシも脱いで、逆立ちをして歩く。 駄 目じゃね。

 私の考えを入れてもらう、三人で、大名の殿様、太郎冠者、次郎冠者になる。  松さんが「なったなったじゃになった、当家の婿殿、じゃになった」、竹さんが 「何じゃに、なあられた」、梅さんが「長者になあられた」とやる、「長者にな りまして、おめでとうございます」とやるんだ。 ヘェーッ、ご隠居は何でも よく知っていますね、天才だ。 謡の調子でやるんだ。 いつも三軒掛け持ち する、最初はおでん屋。 それは、屋台だ。 白扇を使う。 婆さん、貸して くれませんか、三本。

 (謡の調子で)、ハッヘッ、喉が自慢でね、「ナッター、ナッター。ナッター、 ナッター。」 相撲じゃない、柔らかい調子で、粘りをつけて。 「ナッター、 ナッター。ナットウ、ナットウー。」 下っ腹に力を入れて。 「ヘッ、ナッタ ー、ナッター、ジャニナッター、ウワッ。隠居さん、紙、下さい。」 一本調子 でやってみな。 「ナッター、ナッター、ジャニナッター。」 それが一番うま いな。 竹さんの太郎冠者だ。 義太夫が好きで、始終観にいってる。 「何 じゃに、なあられた。」 しまるな。 梅さん、次郎冠者。 家で稽古するよ。  松さんは、大名だから、最初に口上を言うんだ。 「本日はお日柄もよろしく、 おめでとうございます、松竹梅、お招きをいただきまして、有難うございます、 三名でご祝儀をつけさせて頂きます。」とな。

 時刻になって、三人、伊勢屋に飛び込む。 婚礼、端(はな)は陰気だ。 お い、松、先にやって、ゆっくり飲もう。 口上をやる、相手の隙(すき)をつ いてな、「口上の隙」ってえぐらいだから。 今、やる。 三人で、ご祝儀をあ げてくれるのか。 ご案内を頂きました、手前どもは出入りの職人で、三名で ご祝儀をつけさせて頂きます。 待ってました! 扇子持って、頭下げて、上 げる。

 「なったなったじゃになった、当家の婿殿、じゃになった」、「何じゃに、な あられた」、「大蛇になあられた。」 違うよ。 只今のは、稽古で、これからが 本番。 「番茶になあられた。」「ほうじ茶になあられた。」 家で稽古して来る って言ってたろ。 「なったなった、やんなった。」 梅さん、泣きながら、「亡 者になあられた。」

 大変なしくじりで、隠居さん、逃げるようにして帰って来ました。 梅さん は、どうした? 床の間で赤くなって、小さくなっていた。 心配いらない、 梅さんだから、今頃は婚礼もお開きになっただろう(小志んは、手で花が開く 恰好をした)。

桃月庵白酒の「寝床」前半2020/02/03 07:08

 白酒は白い着物で、正月興行は20日までひっぱる、と。 普段興行、打ち 上げをやる。 会長(落語協会、市馬)は、すぐ歌う。 パセラカード、上級 者のカードがある。 行くよ、てんで、行きますと、カラオケスナック。 リ クエストをして、出ると、偉い方がマイクを握りしめる。 下手な方も、いら っしゃる。 落語会の打ち上げ、有志で行きましょうとなり、まず噺家さんか ら、というのが困る。 殺伐とした雰囲気が嫌、「マイウエイ」なんか歌い上げ るところが好きなんだろう。 独房のような閉鎖環境で、聞いてほしい、見て ほしいで、するんだろう。 これは習い事に通じる。 踊りのお披露目の会、 満杯だけれど、興味を持って見てる人がいない。 落語教室で覚えた人も、披 露したい。 大ネタの「らくだ」、その後「子ほめ」を無理やり聞かせられる、 えらい騒ぎ。 義太夫を習ったが、二回で止めた、難しい。

 聞かせたくなるのが人情で。 アーアー、アーアー、ア゛、ア゛、ブォー、 ブォー! お師匠さんは来ているか? かけぎぬ(掛け衣?)届いているか?  今日は御簾内(みすうち)で語ることにしよう。 料理人は来ているか? 茂 造は帰ってきたかい?

 提灯屋には行ったかい、好きなのに、こないだは来られなかったから、喜ん だだろう。 何たることか、何たることか、喜ばしいことか…、でも、ほおづ き提灯を五十、注文を受けたそうで、猫の手も借りたいほど忙しいそうで、今 晩は伺えない、と。 そうか、こちらは道楽みたいなもんだからな、あいつに は差しで、みっちり語ることにしよう。 小間物屋はどうした? おかみさん が臨月だそうで、旦那には顔向けできないと、申しておりました。 来られな いなら、来られないと、はっきり言いなさい、お暇があったらということだ。  金物屋は? 親類に不幸があって、今晩お通夜…ニャゴ、ニャゴ、ニャゴ。 後 半が、まるで聞こえない。 来られないなら、来られないと、はっきりしゃべ りなさい、商人なんだから。 豆腐屋は、どうした? 生揚げとガンモドキの 注文を沢山受けまして、ガンモドキはつぶした豆腐とすりおろしたヤマノイモ を混ぜ合わせ、ハスにゴボウに紫蘇の実などの具を入れる、紫蘇の実は塩抜き をしなければならないので、大変手間がかかりますそうで。 ガンモドキの製 造法を聞いているんじゃない、来られるのか、来られないのか? 来られない んでございます。 言い方を変えよう、長屋の者は誰と誰が来るんだ? 誰も、 いらっしゃいません。 それをお前、ぐだぐだと。 鳶頭はどうした? こうい う時の為に、日頃半纏をこしらえてやっている。 寄合の幹事で、来られない そうです。

 じゃあ、今日は久しぶりにお店のみんなに聞かせる会にしよう、どうだい?  それは、それは、つらい(と、膝を叩く)。 徳兵衛、一番番頭は? 昨日の寄 合で、二日酔い、泣き面に蜂だと、二階でお休みになっています。 文吉は?  文どんは、脚気で、足を投げ出さなければならないから失礼だと。 藤吉は?  藤どんは屋根の修理をしておりまして、旦那の義太夫と言った途端に、落っこ ちたんで。 峰吉は? 峰どんは眼病で。 眼病…、脚気までは許すが、眼病 なら義太夫を聞けるだろう。 涙には塩分が多いそうで、けっこうな義太夫を 聞いて、泣くのがまずい。 家内はどうした? 朝方、胸騒ぎがするとおっし ゃって、坊っちゃんと里にお帰りになりました。 茂造、お前はどうだ? 私 も長屋を回って、疲れておりまして。 身体は達者なんだろう? 因果と丈夫 で…、よろしゅうございます、健康だけが取り柄、私一人が犠牲になれば、よ ろしいんでございましょう。 どうぞ、お語り下さい。 茂造、泣くな、泣き たいのは私の方だ。 義太夫は、昔、名人上手が苦心して書き下ろした物語、 結構なものだ。 その物語に、さらに節がつくんだ。 節がつくだけ、情けな い。

桃月庵白酒の「寝床」後半2020/02/04 07:19

 素人が語るんだから、料理も酒も用意して、木戸銭も取らずに聞かせるんだ。  木戸銭を取ったら、泥棒だ。 ギュッと握りこぶしを握るな、唇を噛むな。 言 いたいことがあるなら、ちゃんと言え。 お前達、何だな、私の義太夫がまず いから、聞きたくないんだな。 やっと、わかったか。 まずいというが、私 の良さがわかる方がきっといる。 (首を振って)皆無でございます。 いい です、お前達には暇をやる。 長屋を回って、店立てだと言って来い。 廃墟 になさるんで。 洒落にならないよ。

 長屋の皆さん、お待ちになっています、いつ始まるかと。 店立てだ、お前 達も出て行ってくれ。 提灯屋さんは、人を雇って、お出でになっています。  豆腐屋さんは、旦那の義太夫はどこか違う、癖になる、豆腐のようだと、おっ しゃっています。 小間物屋さんのおかみさんは、想像妊娠だったそうで。   鳶頭は、幹事を代わってもらった、と。

 そうか、大人気なかったな、店立て、前言撤回だ。 気持を奮い立たせる。  お師匠さんは、お帰りになっています。 店立て無し、義太夫無しということ で、よろしゅうございますか。 茂造、その姿勢が良くない。 粘り腰だ、茂 造、行動を起こすのは大変だ、日本語にはいい言葉がある、「そこを何とか」。  心はいい、言葉だけでも、そこを踏まえる、今日は語らない。 「そこを何と か」。 茂造、わかった、語りますから。

 お騒々しいことで。 長屋の者、みんな来たのかい。 前の一番番頭、急に いなくなったけな。 旦那の義太夫、一段だったらまだいい、重なる内に脂汗 が出てくる、蔵を回って、窓から飛び降りた。 明くる日、白い鰐が来るとい う謎の言葉を残して、いなくなった。 料理だけは、いいんだ、頂こう。

 御簾内から、いきなり来たよ。 頭を下げろ、危ないですよ。 アッ、倒れ た、人工呼吸をしろ。 三味線が、パイプラインみたいだ。 命にかかわる。  防御本能で、眠気を催す。 みんな、寝る。

 静かになったので、旦那がひょいと覗く。 茂造まで寝ている。 起きなさ い。 アッ、助かった。 天は我を見捨てなかった。 一番後に寝ました。 泣 いてんのは、誰だ? 定吉か。 悲しゅうございます。 茂造に聞かせよう。  泣くんじゃない、どう思ったんで、どこが悲しくなったんだ。 口を利きな、 明日から一番番頭だ、先代萩の千松か、釜入りの五郎市か? そんな所じゃな い、そんな所じゃない、あそこでございます。 あそこは、今私が義太夫を語 った床(ゆか)じゃないか。 あそこは、いつも私が寝る寝床でございます。

三遊亭遊馬の「大工調べ」前半2020/02/05 07:02

 遊馬は小遊三の弟子、2011年8月に「佐野山」で一度出た。 黒紋付、のっ ぺりした顔でタレ目、イタリアのトスカーナの生れ、というのは嘘で、埼玉、 桶川市の生れだという。 「細工は流々仕上げを御覧じろ」という。 今はマ ニュアルがあって、丁寧に教えるけれど、昔は、盗め、と言われた。 それぞ れのやり方があって、腕に自信があった。 中には、そうでないのもあった。  よっちゃん、お前に吊ってもらった棚が落ちたよ。 何か、のせたんじゃない のか。

 とうりゅう(棟梁)は苦労する。 与太、いねえのか、返事ぐらいしろ。 棟 梁か。 いい仕事が入った、番町のお屋敷だ、三年はかかるだろう。 明日っ からだ。 まずい、道具箱がねえ。 命の次に大事な道具箱、どうした? 持 ってかれた。 盗られたのか。 大家に持っていかれた。 大家か、店賃を溜 め込んだな。 棟梁は、察しがいい。 どのくれいだ?  一年と十二カ月。  二年というんだ。 いくら? 一両二分と八百。 そんなことだろうと思って、 支度をしてきた。 これを持って行って、返してもらってこい。 ガクで六枚、 一両二分だ。(「ガク」を以前調べた。額、額銀の略。天保一分銀の俗称で、形 が額面に似ているところから、そう呼んだという。)  八百足りねえ。 御の 字、アタボウだ。 アタボウって、何だ? 当りめえだ、べらぼうめ、を詰め て言うんだ。 言い尽(いいづく)だったら、只でも取れる。 大家で、町役 だ、長い物には巻かれろって言う。 明日は門限がある、早くもらって来い。

 オーヤサーーン! 変な声出して、与太郎だな。 道具箱くれ。 決めとく ことは、決めとこう、ここに出しな。 放りやがったな、馬鹿野郎。 お宝っ てぐらいだ、大切にしろ。 ガク六枚、一両二分、あと八百はどうした。 御 の字、アタボウだ。 アタボウって、何だ? 大家さんも知らなかったんだな、 俺も知らなかった、当りめえだ、べらぼうめ、ってことだ。 言いづくだった ら、只でも取れる。 大家で、町役で、長え犬の糞に巻かれろって言う。 あ と八百持って来い、これは内金に預かっておく。 帰れ!

 道具箱は向こう、金も向こう、取り上げ婆アか。 取り上げ爺イだったな。  アタボウ、町内で流行ってないな、こんこんと教えてやった。 向こうでやっ たのか、怒ったろ。 帰れ!って、怒鳴った。 ついて来い。

 ごめん下さい。 なんだい、棟梁じゃないか、表から来ればいいのに。 い つも婆さんと、立派な棟梁になったと噂しているんだ、親父を越えたな。 小 さくなるな、なんだい、お連れの方がいるのか。 どーも、大家さん。 馬鹿 が来た。 与太のことで、来なさったのか。 親孝行者なんで、可愛がってい るんで。 こいつは馬鹿だが、仕事は上手い、明日っから仕事で門限がある、 手ぶらで行かせたい。 たかが八百で、道具箱を渡してもらえないそうで。

 たかが八百というが、私には大金だ。 うちの奴に、すぐ放り込ませますか ら。 賽銭箱じゃない。 この通り、頭を下げているんですから。 ちっとも 下げちゃあいない、私を誰だと思っているんだ、町役の前で、大きな面をして もらいたくないな。