皇后陛下がネットに本音を発信2020/05/15 07:11

 新潮社のPR誌『波』の5月号の刊行記念対談「皇后陛下が立ち上がる時」 で、作家の島田雅彦さんが皇室小説『スノードロップ』を書いたことを知った。  対談の相手は、『新聞記者』(角川新書)を書き、同名の映画のモデルになった 東京(中日)新聞の首相官邸担当記者、望月衣塑子(いそこ)さん。

 対談によると、小説の不二子皇后は私的に侍女として岡崎ジャスミンという ハッカーを雇い、クローゼットの中のパソコンから「スノードロップ」という ハンドルネームで本音を発信し始める。 望月衣塑子…「ちょっと前までは官 邸も「テレビや新聞を抑えていればいい」という感じでしたけど、今はネット 世論が影響を与えていると実感しました。(中略)森友・加計が盛り上がってい た頃と比較しても、ネット上での市民の分析力、情報発信力が格段に上がって います。」 島田雅彦…「もともと、文学などたいしたものではないけれど、時 の政治からは自由でいることはできます。世間からドロップアウトした人間で すから、……」  望月…「(映画『新聞記者』は)いくつもの映画賞を受賞す るなど大きな反響がありました。文学や映画などの芸術作品は日々のニュース とは別の形で、人々の心にダイレクトに突き刺さっていく力を持っています。 ですから、『スノードロップ』のメッセージが、皇族を含めて、この国を動かす といいですね。」

 望月…「皇室を見渡すと、新たに強いメッセージを発信できる人は、長くメ ディアの攻撃を受け皇室への「適応障害」に苦しんできた雅子皇后しかいない のではないか。島田さんは、その期待を小説として書いたわけですね。」 島田 …「目指したところはまさに望月さんの読み通りです。日本で男女平等の実現 は、ワールドスタンダードからかなり立ち遅れています。現状の改革は当然必 要として、一方で皇后の役割は歴史的に小さいものではないのです。天武天皇 の没後、称制した後即位し、白村江の戦いの戦後処理に功績のあった女帝持統 天皇。近代に入っても、ハンセン氏病救済事業に尽力し、戦中に神がかりにな って昭和天皇に大きな影響を与えた貞明皇太后、平民初の皇后として大衆天皇 制下のスターであり続けた美智子上皇后など、国母の影響力は大きいのです。 ですから、皇后の地位はジェンダー論的な議論よりも上位の概念として考える 必要があるかもしれません。雅子妃も、皇后になれば権威も違いますし、自由 度が増してさまざまな活動が可能になります。皇后として存在感を増すことが、 結果的に「人格否定」への最良の復讐となるかもしれません。」 望月…「復讐 ですか(笑)。なるほど。」 島田…「天皇が一貫して雅子皇后を守っているの も大きいです。彼は歴代天皇の中で最高のフェミニストかもしれません。」 望 月…「平成の代とはまた違う斬新な皇室像を思い描いていますね。」 

 島田…「戦後の昭和天皇と平成の代で共通するテーマは平和への希求です。」 「天皇の権力は伝統に基づいており、何もしなくてもみんな崇拝し、服従して くれる。どんな独裁者も天皇のようにはなれないのです。」 望月…「天皇が背 負っている歴史と伝統に希望を託されているわけですね。私も、プロンプター の原稿を読むだけの総理大臣とは別の権威があって欲しいです……。」

 島田…「(天皇は)日本の総理大臣の指示にも距離を置くし、アメリカ大統領 の言いなりにもならない。天皇は誰にも従属せず、より強力に国際協調のスタ ンスで世界と連帯する「象徴」となるほかないんですよ。」「今上陛下が上皇と 違う天皇像を模索しようとする時、次にどこを狙うのか。とりあえずの処方箋 を書いてみたわけです。」

 というわけで、私は、新型コロナウイルスの感染拡大の巣ごもりに、『スノー ドロップ』を読んでみることにした。

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