入船亭小辰の「金明竹」<小人閑居日記 2020.8.17.>2020/08/17 07:08

 7月17日の第625回落語研究会も、無観客収録となり、14日にDVDが送られてきた。 ブログラムは、

「金明竹」     入船亭 小辰

「堪忍袋」     柳亭 こみち

「井戸の茶碗」   春風亭 一朝

「次の御用日」   三笑亭 夢丸

「不動坊火焔」   柳家 花緑

 入船亭小辰、DVDでご覧の方は、早送りしたり、間違えた所を巻き戻ししたりしないように、ただ流してくれ、と。 おめでたい人間の噺、馬鹿で兄弟。 兄ちゃん、つくづく考えるんだけれど、1年は13カ月だよね。 馬鹿、1年は14カ月だ。 (弟は、指折り数えて)…10月、11月、12月、お正月、13カ月だ。 馬鹿、お盆が抜けてらァ。 これに親父の馬鹿が加わる。 兄ちゃん、お彼岸は、春のお彼岸と秋のお彼岸の、どっちが先に来るのかな。 馬鹿、春のお彼岸が先に来ることも、秋のお彼岸が先に来ることもある。 そうだよね、お父っつあん。 馬鹿、来年のことが、今からわかるか。 すると、おかみさんが、やっぱりウチの人は頼りになる。

 松公、何してんだ、猫のヒゲ、取るな。 猫の爪、切ったのお前だな、向こうの屋根で滑って歩いてるじゃないか。 伯父さん、出かけて来る、店番してろ。 誰か来たら、奥の伯母さんを呼ぶんだ。 お前が相手をするんじゃないぞ。 いってらっしゃい。 のべつ叱言だ、きれいにしろっていうから、庭の石灯籠の苔を取ったら、あれは駄目だと、叱言が好きなんだ。

 誰か来た。 あのー、ちょっと、ごめんやす。 謝ってる、悪者だな。 旦(那)はん、おいででっか。 あんさん、丁稚どんで。 松公だ、松公! アホやな。 よう聞いておくれな。 「わて京橋中橋の加賀屋佐吉方から参じました。 先だって仲買の弥市を以て取次ぎました道具七品、祐乗宗乗光乗三作の三ところ物、刀身は備前長船の住則光、横谷宗珉四分一拵小柄付の脇差、柄前は埋れ木じゃと言うてでございましたが、ありゃあたがやさん(鉄刀木)で木が違うて居りますさかい、ちょっとお断り申し上げます。 自在は黄檗山金明竹、ズンドの花活には遠州宗甫の銘がござります。 利休の茶杓、織部の香合、のんこの茶碗、古池や蛙飛び込む水の音。 これは風羅坊(芭蕉)正筆の掛物、沢庵木庵隠元禅師貼り交ぜの小屏風、あの屏風は、私の旦那の檀那寺が兵庫にござりますが、その兵庫の坊主の好みまする屏風やさかい、兵庫にやって兵庫の坊主の屏風にいたしまする、さよう御言付けを願います。」 あんさん、お分かりか。 松公! 松公は分かった、他に誰かおらんかな。 (もう一度、口上を述べる) 「……かよう御言付けを願います。」

 伯母さーーん、表に「兵庫の、兵庫の」という馬鹿が来た。 どちら様で。 あんさん、ここのお家はんですか? お湯屋さんは、二丁ばかり先。 おかみさんですか。 家内で。 (口上を述べる) 「……かよう御言付けを願います。」 今日もよいお天気で。 うふふふふ、お茶淹れてらっしゃい、どうして猫を蹴飛ばすの。 どうもあいすみません、これに叱言言っていて、二、三、聞き逃したので、もう一度。 もう三遍もやって、顎がガクガクしてまんのや。 これきりでっせ、よーーく聞いておくれやす。 (ゆっくりと、口上を述べ始める) 丁稚どん、そこでゲラゲラ笑わないで。 (大きな手振りをして)この手は見なくていい。 「……きーがちがっておりますさかい、ちょっとお断り申し上げます。……ごめんやす。」 ちょいと、待って。

 お茶持ってきたら、もう一遍ぐらいやってもらえたかもしれないのに、ゲラゲラ笑ってて、お前、初めから聞いていたんだから、どこかはっきりしてるとこはないかい。 初めは? モヤモヤ。 真ん中は? ボーーッ。 終りは? 兵庫の、兵庫の。 何も覚えてないじゃないか。

 お帰りなさいませ。 叱言は、奥でやりなさい、店先だと外へ丸聞こえだ。 どなたか見えたのか、どちらの方だ。 あちらの方から、こちらへ。 馬鹿が移ったんじゃないか。 どんな御用だ。 そう、中橋の加賀屋佐吉さんからとか。 使いの方で、仲買の弥市さんが気が違って、遊女は別の客に惚れたといい、強情に掃除をしたんで、その遊女をずん胴斬りにして、沢庵と隠元豆でお茶漬けにして、いくら食べてもノンコのシャア、御座船に乗って遠州から兵庫に着いて、お寺にお坊さんがいて、屏風の蔭で、坊さんと寝たみたい。 色気違いか。 その向こうに屏風、坊主、屏風、坊主、屏風、坊主。 一つぐらい、はっきりしたところはないのか。 そうそう、古池に飛び込んじゃったんだそうで。 そりゃあ大変だ、弥市には道具七品を買うように、手金が打ってあったんだ、買ったかな。 いいえ、買わず!

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