スコットランド議会選で独立派が過半数2021/05/22 07:06

 スコットランドについての報道に興味があるのは、明治日本の上下水道の先生ウィリアム・キニンモンド・バルトンのおかげである。 スコットランド人W・K・バルトンは、明治政府が上下水道事業を始めるにあたって招いた「お雇い外国人」の衛生工学技術者で明治20(1887)年に来日した。 帝国大学で衛生工学を教えて多くの日本人後継技術者を育てる一方、国内24都市で水道、下水道の調査、計画、助言などの活動をした「日本の公衆衛生の父」と呼ばれる人物で、さらに台湾でも同様の業績を残している。 そうした専門分野だけでなく、写真の大家として日本の写真史にも重要な足跡を残し、浅草に建てられた日本最初の高層建築「凌雲閣」(浅草十二階)の設計者でもある。

 1983年ハーバード大学のクレイグ教授の研究で、福沢の『西洋事情』外編の主体になったチェンバーズの『政治経済学』のチェンバーズというのは出版社であって、著者はジョン・ヒル・バートンというスコットランド人であることが明らかになった。 そのことにふれた私の『五の日の手紙3』(1994年)「『西洋事情』を読む」を、W・K・バルトン研究家の稲場紀久雄大阪経済大学教授の夫人日出子さんがお読みになったことから、W・K・バルトンの父親ジョン・ヒル・バートンと、福沢に影響を与えたジョン・ヒル・バートンが同一人物だということが判明したのだった。 そこで私は、『福澤手帖』第102号(1999(平成11)年9月)「バルトンとバートン」で、W・K・バルトンと、福沢を通じてその父親が、親子で日本の近代化に貢献していたことが判明したと、書かせてもらったのだった。

 前置きが長くなった。 5月6日に、イギリスのスコットランド議会の選挙の投票があり、8日に大勢が判明した。 定数129のうち、スコットランド国民党(SNP)64、緑の党8で、スコットランド独立を掲げる政党が過半数(65以上)を獲得した。 議会が選出する自治政府は、SNP党首ニコラ・スタージェン氏が引き続き首席大臣(首相)を務め、独立を問う住民投票の実施を2014年(結果は反対多数だった)に続いて、英政府に要求する方針だという。

 住民投票実施の権限は、自治政府ではなく英政府にあり、ジョンソン政権は拒否を公言しているが、独立世論の高まりを突っぱね続けられるかは不透明だという。 英国では、スコットランド独立は連合王国の解体につながりかねない危機と受け止められている。

 2016年のEU離脱を問う国民投票で、スコットランドは62%が反対した。 だが、英国人口の8割超を占めるイングランドで賛成派が勝り、ブレグジット(英国離脱)が決まった。 「自分たちの民意が反映されなかった」というスコットランド住民の衝撃は大きく、今回の議会選で独立派のSNPと緑の党が票を伸ばす原動力になった。 英国の保守党政権は、緊縮財政や福祉削減を進めてきた。 この点も、公共サービスの充実や寛大な移民政策を好むスコットランドと逆行する。

 SNPのスタージェン党首は、8日の勝利演説で、今後5年の任期中に住民投票を実施すると改めて宣言、「ジョンソン首相だろうと誰だろうと、スコットランド市民が未来を選ぶのを阻むことは、民主主義の正義に反する」と述べた。 一方ジョンソン首相は、一度実施した住民投票をやり直すことを「無責任だ」と批判している。 両者の緊張の高まりは、避けられそうにない。

  追伸 朝日ネットのブログ「アサブロランキング」で、昨日の「慶喜、薩摩藩主導の朝廷参与会議をつぶす」が、2月14日に続いて、1位になりました。 理由もわからない望外の珍事ですが、お読みいただいている皆様のおかげです、ありがとうございます。