安野光雅さん最後の絵本『なぞなぞ』、空想と子ども2021/07/24 07:01

 稲場紀久雄・日出子ご夫妻が送ってくださったレターパックプラスは、宝箱のようで、安野光雅さんの最後の絵本という『なぞなぞ』「こどものとも」2021年3月号(福音館書店)も入っていた。 なんたって安野光雅さんである。 色がきれいだし、水彩の垂らし込みの、ほんわかした感じが、とてもいい。 「やまんば」も「ろくろくび」も「きゅうけつき」も、優しい顔をしている。

 表紙の左上の「なぞなぞ」は、「せかいじゅうの こどもに プレゼントを くれるのは だれでしょう?」。 四択で、「たからぶね」のほかは、ページいっぱいに背の高い「あしながおじさん」、大黒の袋を背負った「だいこくてん」、それとも「〇〇〇〇〇〇〇」(特に七文字を匿す)。

 表紙の右上の「なぞなぞ」は、「ちいさな からだで たびに でて うちでのこづちで おおきくなるのは だれでしょう?」。 三択、裃を着て扇子を前に置きお辞儀している「ふくすけ」、男の子と女の子の「ざしきわらし」、お椀の舟に乗った「いっすんぼうし」。

 表紙の下の「なぞなぞ」の答は、「しらゆきひめの おかあさん」、「したきりすずめの おばあさん」、「シンデレラ」の三択なのだが、「なぞなぞ」の問題は何でしょうか、絵を見て考えて下さい。

 安野光雅さんは、その著書『かんがえる子ども』(福音館書店)に、こんなことを書いているそうだ。

「わたしが子どもの頃のことです。五つ下の弟に「いまから秘密を教えるから、絶対人にいうなよ。兄として、弟に秘密を持つことはできないのだ」といって話をしました。

「うちには地下室があって、お金でも洋服でもおもちゃでも、いろいろしまってある。入り口は米櫃の中だ。米の中をかき分けて、掘るようにして深く進むと、地下室に出る。うちは、外から見ると貧しいが、米は地下室から湧きだしてくるんだから、食べることで困ることはない」

弟はみるみるうちに真顔になりました。すると、自分でもそれがほんとうのことのように思えてきました。

「いいか、おまえも六年生になったら、父さんが秘密を話してくれる。だから、六年生になって、この秘密を聞いたら、はじめて聞いたような顔で聞くんだぞ。この話は、だれにもいうなよ。『うちに地下室がある』と自慢するものがいても、『うちにもある』などと負けずにいうなよ」

のちに、弟にこの話を覚えているか、とたずねたところ、「あんなに心豊かになったことはなかった」といっていました。子どもは、こういう世界に反応してくれます。きっと、子どものための話(童話など)というものは、こうやって、子どもたちと反応しあい(実験台にし)ながら、出来ていったのではないかと思います。」

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