<巨人軍オーナー>としての渡辺恒雄さん2021/08/31 07:05

 1996(平成8)年<巨人軍オーナー>になった渡辺恒雄さんは、プロ野球界に大きな影響力を発揮した。 元読売新聞社会部長で、巨人軍代表(1998年~2001年)を務めた山室寛之さんが証言した。 渡辺さんは、野球協約をよく読み込んでいて、自由闊達な意見を述べた。 2001(平成13)年、横浜ベイスターズの株式が、マルハからニッポン放送に譲渡された際、ニッポン放送はフジサンケイグループで、同グループはすでにヤクルトを持っている、両方支配することになると、協約違反になる。 大阪読売が阪神タイガースの株式を持ったらどうなる、という論法だった。 この話は、結局、白紙撤回となった。 他のオーナーでこんな指摘をした人はいない、協約の理解度のレベルが違う。

 2004(平成16)年には、球界再編成(一リーグ制)問題が起きた。 大阪近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併構想が明らかになった。 これに対し、渡辺はパリーグの球団数が減った後の、一リーグ制を主張、パリーグの球団も巨人や阪神と当たれば、お客が入って儲かる、プロ野球全体が活気づく、と。 7月、これにプロ野球選手会(古田敦也代表)が反対、球団側と労使交渉をした。 渡辺は記者の取材に、「分をわきまえろ、たかが選手が…、立派な選手もいるけれど」と話し、「選手がオーナーと対等で話す協約上の根拠は一つもない」とした。 この「たかが選手が…」発言が、大々的に報じられ(山室寛之さんは、切り取られた一部分によって、と)、一リーグ制は失速した。 渡辺はこの一件を振り返って語った、腹は立ったが、巨人が潰れるわけでも何でもない、プロ野球に関する関心は高まった、そもそも嘘で「選手がオーナーと会って談判してやっつけたい」と言ってますよ、と記者が言うから、「何だって」と言った。 プロ野球を活かそうと思って提言したことだったのに、勝手にしやがれと思った。

 御厨貴東大名誉教授は、この件を、「経営者の視点と、ファン感情の乖離。渡辺のは、勉強した野球、理屈で答える、指揮命令系統で動くと思っているヒエラルキー。」と分析した。 この騒動で、パリーグは観客も増え、強くなった。

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