「メディアは戦争の愚かさを伝え続けてほしい」2021/09/03 07:07

 現代の政治状況をどう思うかと聞かれた渡辺恒雄さんは、歴代の総理大臣の印象を語った。

 池田勇人…話し方が易しくわかりやすかった、近頃の政治家は、易しいことを難しく言えばいいという気がするぐらい、言うことが晦渋だ。 政治は、白を黒とうまく言うことも、少しは必要なんだな。

 田中角栄…本を読んでよく勉強していた、いろいろ知恵もあった、ちょっと余計な知恵もあって、お金の方で尻尾を出したりして、困ったけれど。 話は面白かったし、勉強になった、話が即物的で。

 中曽根康弘…参謀次第だよ。 政治家は、いい参謀がしっかりつかなきゃだめ、大平正芳さんのブレーン、みんな取っちゃった。 土光敏夫、瀬島龍三、大変な政策家を。 そういう人が今いない、政策が貧困になる。

 ここで、平成期の政治が「ポピュリズム」に傾斜したのでは、と警鐘を鳴らした。 小泉純一郎…郵政民営化なんて、後を考えずに「世間を驚かしゃあいい」という程度、どうなるか考えない「ワンフレーズ・ポリティクス」。

 <メディアの役割> インターネットの登場によってメディアの状況が変わる中で、新聞の役割は変わらない、どう適応するかで、うまく適応すれば生き残れる。 変わることも必要だ。 記者は、政治家を馬鹿にするくらいじゃないと駄目。 やり手の記者は、お互いに付き合っていて、ギブアンドテイクで非常に役立つ。 僕はいい政治家の友達、いい新聞記者の友達、両方いたからね、情報は倍増になる。 持ちつ持たれつの関係になると、政治記者は深みが出る。

 次のメディアを担う人に、戦争の愚かさを伝え続けてほしい。 戦争、暴力によって国際関係を解決するんじゃなくて、他の手段でやらなきゃいかん。 あの戦争も、新聞が一致して反対すれば、ある程度は防げたと思う。 ところが、一致して推進する方向へ行っちゃった。 当時の新聞編集者も情けないと思うね。 何であんなものに付和雷同して、万歳万歳を言ったのかと思うね。 社論をまとめるに当って、正しいことじゃないとしょうがない、あの戦争に反対することだけは、絶対に譲れない。

 大越健介さんはインタビューの最後に、渡辺恒雄さん像を、こうまとめた。 哲学を愛する理想主義者にして、超リアリスト。 圧倒的な教養人でありながら、どこかユーモラスな庶民性。 弱肉強食の権力の信奉者にして、争いを憎む平和主義者。 それらすべてが、一つの人格の中に矛盾なく同居していた、唯一無二の言論人。 渡辺恒雄とは、そういう人だった。

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