「柿」と「うそ寒」の句会2021/10/18 07:05

 10月14日は渋谷句会、久しぶりにリフレッシュ氷川を会場に、昼間、集まって対面の句会を開くことができた。 兼題は「柿」と「うそ寒」だった。 親父ギャグを言う天気予報のおじさんが一昨日、「オータムが、おお寒になる」と言っていたのは、「うそ寒」でなく、今朝のこれだったのか。 事前に近くの氷川神社、金王神社への吟行企画(兼題、四句は提出)もあった。 私は直接会場に行き、つぎの七句を出した。

  高野への登り軒並柿を売り
  雑木林抜ければそこは柿畑
  一つ話柿盗み落ち野火止へ
  柿の色柿の光沢描き得ず
  うそ寒やシャッター通り風が抜け
  うそ寒や夏がいきなり冬となる
  うそ寒やそろそろ障る温暖化

 私が選句したのは、つぎの七句。
  三山の風を浴びたる柿すだれ    祐之
  尼さまの頭陀袋中くもつ柿      照男
  豆柿の熟すを待てるリスの居て   三枝子
  やうやくに生りたる柿の渋きこと   さえ
  つやつやと色づく柿の日ざしかな  伸子
  うそ寒の部屋の電気をつけにけり  盛夫
  喧噪の街から杜へ小鳥来る      淳子

 私の結果、互選が一票しか入らず、そんなものか、でもスコンクは免れたかと思っていたら、本井英主宰選が三句もあって、ホッとした。 主宰選は<高野への登り軒並柿を売り><雑木林抜ければそこは柿畑><うそ寒やシャッター通り風が抜け>。 「シャッター通り」を、三枝子さんが採ってくれた。

主宰の選評。 <高野への登り軒並柿を売り>…高野山へは正面から登ってしまうが、学文路(かむろみち)など古い道の、麓のあたりは、なるほど柿の名所。 <雑木林抜ければそこは柿畑>…頭で考えた句ではない、作者にはそういう経験があって、流れるようにつくったのだろう。びっくりして、面白かった。 <うそ寒やシャッター通り風が抜け>…社会の推移で、「シャッター通り」という言葉ができた。衰退は、つらい。なるほど、「うそ寒」の気分。

句会から帰宅したら、「等々力短信」を読んで下さっている慶應志木高時代の故О先生の奥様から毎回頂戴する返信が届いていて、「志木高構内の柿の実がきれいに色付いていますが、穫ってはいけないのだそうです。美味しい柿なのに……と昔を想い出しています」とあった。 <一つ話柿盗み落ち野火止へ>は、当然、その柿である。 仲間が寄れば、必ず出る笑い話だ。 部活か夕闇迫る頃、追っかけてきたのは、О先生ではなく、T先生か、もう一人のT先生だったか。 構内には、野火止用水があり、柿畑があって、農芸の時間に柿の剪定などをした。 実は、柿畑の先には、少し悪いのが煙草を喫いに行く森、雑木林があった。 つまり<雑木林抜ければそこは柿畑>は、反対側から来たことになる。