消えた写楽がヨーロッパでブームになり逆輸入2021/10/23 07:20

 『歴史探偵』「写楽 大江戸ミステリー」、なぜ、140点の作品だけを残し、10か月という短期間で消えたのか?  勝川春英、歌川豊国というライバルが登場した。 二人は役者を美男子に描いて大衆の支持を得た。 写楽は、役者の顔の皺(年齢感丸出し)や眉間の広さ、大きな鼻、特徴的な顔を誇張して描き、その個性、人となり、本質、人間性までを描こうとした。 それがきれいな顔の役者の絵を見たいファンや、役者本人に嫌われたからだという。 写楽は、時代が早すぎた、と。

 長く忘れ去られていた東洲斎写楽だが、明治も末になってドイツ人ユリウス・クルトが『SHARAKU』(1910(明治43)年)をミュンヘンで出版し、世界三大肖像画家の一人と紹介したことで、ヨーロッパでブームとなり、日本に逆輸入されることになった。

 番組とは別にネットで、ギリシャのコルフ島のアジア美術館で東洲斎写楽の肉筆画が見つかった2008年8月当時の新聞記事を見ることが出来た。 小林忠・学習院大学教授ら国際学術調査団が写楽の真筆と鑑定した。 写楽の肉筆画は、極めて少ない。 扇面画に描かれた役者から推測して、浮世絵版画の世界から姿を消した直後の筆と見られる。 真筆と判断した根拠について、小林忠教授らは、(1)役者の表情のとらえ方や繊細な彩色など、オリジナルな表現の質を備えている、(2)通常、浮世絵に描かれない場面を取り上げており、場面の選び方がユニーク、などを挙げている。 小林忠教授は、写楽がこの肉筆画では抑制された筆致を見せていて、彼の表現の本質や実像をとらえ直す上で、重要な作品になると、話している。

 コルフ島のアジア美術館は、19世紀末から20世紀初めにかけて、ギリシャの外交官グレゴリオス・マノスがパリやウィーンで買い集めた日本などの美術・工芸コレクションを所蔵している。