高校の「探究学習」、福沢の実学2022/04/11 07:00

 来春以降の新学習指導要領の実施で、高校2、3年生の国語や地理歴史などの科目の再編があり、深く掘り下げて学ぶ「探究」がつく科目が新設された。 「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」など。 「探究学習」、高校生がみずから課題を見つけ、調べ、考え、その結果をリポートなどにまとめる経験を通して、思考力や判断力、表現力を養うことをめざす、という。 教科書の内容を、講義で一方通行で伝えられるよりも、どれだけ興味がわくか、容易に想像できる。

 そこで連想するのは、今までしばしば触れてきた、福沢の実学と、小尾恵一郎ゼミで教わった学問の方法だ。 福沢は、学問(実学=実証科学(サイヤンス))で身につけた個人の独立を、活発なコミュニケーションによる「人間交際」(Societyをこう訳した)を通じて、国の独立に結びつけることを説いた。 言いかえれば、自分たちで考えて動かす本当の「市民社会」をつくれるかどうかが、日本の行く末を握る鍵になるということだろうか。

福沢が説いた自分の頭で考える実学、小尾恵一郎ゼミで教わった学問の方法は、自然科学のみならず、社会・人文科学を含めた実証科学のことだった。 福沢は明治16(1883)年の「慶應義塾紀事」の中で、「実学」に「サイヤンス」とルビをふっている。 『文明論之概略』などは、徹底的な実証精神の表れた、「実学」の事例のオンパレードだ。 「スタチスチク」という言葉を使い、例えば殺人犯や自殺者の数が年々ほぼ同数になることや、結婚と穀物の値段に負の相関関係があるという実証分析に言及している。 自分の頭で考えるということには、四つの要素がある。 問題発見、(オリジナルな)仮説構築、仮説検証(誰もが納得するように、科学の作法で)、結論説明(解決策を示す)。 実践によって検証を繰り返し、その都度修正を加え、より良き方法を求め、システマティックに問題解決の筋道を考えるものだ。 その時、公智(物事の軽重大小を正しく判断し、優先順位を決める。『文明論之概略』第6章「智徳の弁」)をしっかり働かせる。

コメント

_ 清宮政宏 ― 2022/04/11 07:24

「探究」は大切ですが、高校で効果をどこまで上げられるか、少し疑問にも思えます。本来なら知識吸収型から一歩前に進むはずの大学においても、それができている学生は多くないように思えるからです。文科省は常に新しいタイプの教育や入試方式を企画していますが、実際の現場での教育とは、齟齬が生じているものも多いように思います。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック