ロンドンのスズメ、イギリスの野望を報知2022/04/21 07:09

 ドリトル先生は、イギリス西部のパドルビーの高台の一軒家に、動物の言葉が話せるので、動物たちと一緒に暮らしている。 オウムのポリネシア、犬のジップ、アヒルのダブダブ、ブタのガブガブ、サルのチーチー…、おなじみのメンバーだ。 ドリトル先生は、生き物たちの声に耳を澄ませ、彼ら彼女らの語る物語を聞き取り、不思議な習性や奇妙な行動の意味を探り、また生き物たちがたどってきた歴史をひもとくことによって、この自然が、なぜ、かくも豊かで多様性に満ちているかを知りたいと思っている。 生を探求している、自然を愛する人、ナチュラリストなのだ。

 ロンドンのセントポール大聖堂の聖人像の耳に巣をかけて家族と暮らしているスズメのチープサイドが、はるばる200キロも飛んで、あるニュースをもたらした。 チープサイドは、彼の息子の脚の捻挫を診てあげて以来、ずっとドリトル先生を慕っているのだ。 イギリス政府がまもなく、南米を調査するためビーグル号という船を出帆させると、人間たちが新聞を見ながら話しているのを聞いた。 そうするとガラパゴス諸島へも行くかもしれない、鳥たちは、そこが生物にとって天国のようなところで、人間の手が及ばない世界最後の楽園であることを、知っていた。 胸がざわざわして、これはドリトル先生に伝えなければと思ったのだ。

 チープサイドに遅れて、彼に頼まれてカラスがかすめ取った、話のもとになった新聞を、ミヤコドリが届けてきた。 新聞には、HMSビーグル号とある、His Majesty’s Ship、国王陛下の軍艦だ。 表向きの目的は、学術調査や地図のための測量となっているが、全長27.5フィート、排水量242トン、船員74人、このうちロバート・フィッツロイ艦長以下軍人も大勢いて、砲も装備している、立派な軍隊だ、これは新しい領土や軍事拠点を探す旅だ。 困ったことに、ガラパゴス諸島はいまのところどこの国の領土でもない。 ビーグル号がガラパゴス諸島を見たら、すぐにその戦略的な価値に気づく、アメリカ大陸から太平洋を渡って東南アジアへ行く絶好の中継基地になるし、パナマをのぞむ場所に位置するのも重要だ。 一番乗りすれば、自分の領土だと領有権を主張するに決まっている、イギリスは貪欲だから。

 プリマスを出発したビーグル号は、まず大西洋を南下して、南米大陸の東岸に沿って先端まで行き、マゼラン海峡を回って太平洋に出る、そして南米大陸の西岸に沿って北上し、赤道近くまで行って、さらに西へ千キロ先まで航行しないと、ガラパゴス諸島には着けない。 どんなに急いでも一年はかかるだろう。 そこにこそ、我がほうにもチャンスある、とドリトル先生は言う。